HikaruがOne Lightになった夜~11/28オーバード・ホール公演~

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《以下、極力ツアーのネタバレにならないよう、この公演でしか起きない出来事のみまとめました。
が、セトリについて2曲だけネタバレがありますので(といってもバレバレの2曲ですが)、ご了承の上、お進みください。》

Hikaruの悲願、オーバード・ホールの幕開けへ

2年ぶりの富山は、「Kalafinaあるある」だった。
つまり、雨だ。

小雨とはいえ、濡れることを避けて駅から直通の地下道を通ってきたため、「ここがHikaru悲願のホールか」と外観を見あげて感慨を得ることもなく、オーバード・ホールに着いた。

開演20分前。
会場の外まで続く入場列の客層は、東京や大阪での「あるある」とは明らかに違う。
もちろんコア層はハイティーンから20代、30代なのだが、老夫婦や親子連れ、妙齢の女性たち2~3人連れや、子供たちのグループ等々の割合が高い。
「『アルスラーン戦記』とか歌ってるKalafinaが、自分たちの町に来るんだぜ!」という子供たちから、「歌が好きだった光ちゃんが、立派になって帰ってくるのよ」という縁ある人まで、さまざまな人がいるんだろうな、と想像すると頬が緩む。

入場し1階席から見渡すと、縦長のコンパクトな会場に、まるでヨーロッパのオペラハウスのような、5階までそそり立つ観客席。ここがHikaruが夢見た会場か、とようやく感慨に浸る。
2200人の会場は5階まで満員。チケットは早々に完売したそうで、過去2回、惜しくも少し余った(らしい)ことから比べると、さらに大きなホールを売り尽くした北日本新聞さん、またまたがんばった!

1階Hikaruサイドの私の客席の2列前には、年若いお母さんと小学校1年生ぐらいの男の子。うーむ、いくら地元ならではの多彩な客層とはいえ、こんな小さな子、大丈夫かな?飽きが来て騒ぎ出すんじゃないのか?とか思っているうちに、18時5分過ぎ、Kalafina in オーバード・ホールは始まった。

開幕~見たことのない風景~

そこに、アットホームな空気はなかった。
過去2回の富山公演では、Kalafinaの3人が入場したとたんに「Hikaruお帰り!」という拍手で観客がHikaruたちを包んだのだが、今回はその間を与えなかった。今回のツアーで用意された、エンターテインメントとして徹底的に作り込んだオープニング・ビジュアルは、客席に先制をかけて、新たなKalafinaの世界に一気に引きずりこんだ。
そして、畳みかけるように曲を終えると、照明が明るくなり、最初のMCに。

いつものようにWakanaの明るい挨拶から…なのだが、普段と様子が違う。

Hikaruが、深呼吸をしながら、上を見上げているのだ。
最上階・5階席を眺めているのではない。
明らかに、頬が空を向いている。
涙をこらえているのだ。

ふだんのHikaruはライブの最中、観客から目をそらさない。
特に冒頭は、「客席の1階から○階まで!東の端から西の端まで!みんなの顔が見えてますよ!」という恒例MCからもうかがえるように、すべての観客を意識することに注力している。そのHikaruが、しかも冒頭からこのような表情をするのは、あまり記憶にない。

Wakana「今日は、Hikaruの故郷に戻ってこれて、嬉しいです!」
そうなのだ、どれほど最新のKalafin演出が極上の作り込んだエンターテインメントで客席を圧倒しても、この3人はいつもの、明るく、まじめで、仲間思いの3人なのだ。
Wakanaの言葉で、会場は雪解けしたかのように、「Hikaruお帰り!」モードに包まれた。

Keikoは自身の挨拶をコンパクトにまとめると、うながすようにHikaruへ。
Hikaruはようやく顔を客席に向け、噛みしめるように、
「…言うこと考えてたんですが…、感動で飛んでしまいました。会場のみなさんの顔を見て、精一杯、歌わせてもらいます。」
万雷の拍手。そして声援。

こうして始まったオーバード・ホール公演。個人的な感想としては、今ツアー最高の仕上がりだったと思う。
とにかく3人の調子が良い。「これはいける!」と誰もが感じるWakanaの伸びやかな第一声が、そのままKeikoとHikaruを巻き込んで、最後まで届ききった感触だ。
ひとりひとりの歌声と、その一体感。バンドメンバーの演奏、ミキシング、照明etc.。まるで箱庭のようにまとまったステージに、歌声がマイクを通さずそのまま聞こえてるんじゃないかと思わせるような、優れた会場の音響。
Hikaruの凱旋公演を、最高のライブとして富山の人々に届けたい。
そんなひとりひとりの願いが、一連の音楽とビジュアルになって、オーバード・ホールを満たしていた。

Hikaruは歌う…“僕は行ける!”

中盤で歌われた、“One Light”。
クライマックスで、Hikaruが「♪僕は行ける!」のフレーズとともに、ピストルで射貫くようなポーズをする。これがむやみにカッコよく、初披露時には女性ファンの「キャーッ!」という絶叫が響いた、Hikaruの見せ場曲だ。

 ♪ もがいて落ちた指で掴んだ
野晒しの憧れを掲げて
僕は行ける

 まだ果てなく続くこの道の彼方に
たった一つの光を
千の心で
見上げる空は何処までも蒼く
連なる叫びの向こうへ
続いてる

 まだ焼け焦げたままの大地に
緑がやがて萌え出ずるように
響く歌声
遠くへ行けると信じた
僕らの名も無き心のままに
光の射す
世界が始まる♪

今になって改めて“One Light”の歌詞を見ると、まるでKalafinaに至るまでの富山の日々、そしてKalafinaになってからの努力の日々を歌っているかのようだ。

私は、KalafinaのライブをFictionJunctionのフロント・アクトの時から見続けているが、今となっては嘘のような話だが、当初はこちらがまるで保護者のように「大丈夫か?がんばれ!」と祈りながら見ていた。特にHikaruはKeikoのように場数を踏んでおらず、Wakanaのように本格的な声のトレーニングを積んだわけでもない上に、口数少なく印象が薄い。プロとして、一番不安定な立場にいた。

プロデューサーの梶浦由記も、初期Kalafinaについて、こう語っている。
「最初のライブのリハは3人とも大変でしたね。まず、ライブ慣れしているKeikoしか客席を見てくれないんですよ。あまりに見ないからWakanaとHikaruに『私が客席の中央に立っているから、私から目を離さずに1曲歌って。それが基本のライブ目線なんだよ』って。(中略)ライブでいちばん大事なことは『お客様に何かを発信する場所である』というのが基本的な考えとして私にあるんです。歌がうまいことも大切かもしれないけど、お客様に何かを発信する意志がなければライブなんてやらないほうがいい。」(『Kalafina Record』2011年)

お客さんをしっかり見て歌う、語る。

今のHikaruが大事にしているムーブメントは、そもそも彼女にとって大事な、プロとなるための第一歩だったのだ。
彼女はこれまで、そういう努力を数限りなく重ねてきた。

富山で、東京で、何度も挫折しながら、何度もつらい思いをしながら、果てなく続く道の彼方にたった一つの光を求めた。
遠くへ、光の射す世界を目指した結果として、“僕は行ける”と歌うHikaruが、今ここにいる。

気がつけば2列前の子供は、総立ち状態の大人たちの背越しにKalafinaを見ようと、イスの上に立って懸命に手拍子をしていた。「大丈夫か?」なんて心配は不遜だった。Kalafinaは今や、小さな子供にも背伸びして手を届かせたいと思わせる、そんな力を持っているのだ。

 

垣間見えた、少女・政井光の顔

そして、ライブも終盤。アンコールを迎える。
2曲を終え、Keikoが「Hikaruの故郷・富山は、水も空気も食べ物もおいしくて、おもてなしの心を感じる、SPECIALなところ。」とリードし、Hikaruへ。

Hikaru「前回、『いつかオーバード・ホールで』と言った『いつか』が、もう叶うなんて思ってなくて。いつも皆さんに夢を叶えてもらっています。今、ここにいるみなさんに、心から感謝します。ありがとうございます。」 (※管理人は「次は」と聞いた記憶があるが、「いつか」だったか?)

そこから、Hikaruの真剣さと軽妙さが混在する不思議なトークが映えるグッズ紹介。そういえばこの定番コーナーも、そもそもはライブの最中に口数の少ないHikaruに、話をさせる場を設け、トークスキルを上げるために作られた、一種の修業のようなコーナーだったのだ。
それから幾星霜。思えば遠くへ来たもんだ。

今ツアーでは「グッズ紹介を地元の方言でやるシリーズ」が展開されているが、まさかの「会話調ではなく敬語込みで語ると富山弁が出ない!という状況に、富山弁を忘れたか?と、頭を抱えて素で焦りまくるHikaru」という、ほほえましい光景が展開された。この瞬間、Hikaruはまるで、もう富山時代の政井光には戻れないことに動揺しているかのようだった。
Keikoがフォローの声をかける。「8年前、仕事で富山弁を出さないよう、一生懸命勉強しているHikaruを思い出した(笑)」

足掻きながら走り続けて

そして、最後の曲紹介へ。

Keiko「ふるさとがあるから、その土地の愛情や優しさが感じられます。ひーちゃんはこういうところで育ったんだなーって。最後の曲は、そんなHikaruがKalafinaでデビューした曲。走り続ける主人公の姿が、Hikaruに被るな、と思ってます。

Hikaru「ここから始まった、富山から始まった、(すみません、このへん感動でメモ追い切れず<(_ _)>)…“sprinter”」

♪I’m calling 遠く足掻く僕の唄が
君の頬を空に向けられたら
独りじゃない…♪

「オーディションに落ちるたびに思っていましたよ。『もう時間がない』って。ママと、『何歳になったんだから、もう時間がないね』という話を高校生の頃からよくしていたんです。自分の精一杯は出していたつもりなんですけど…。」(Hikaruインタビュー 前同)

Hikaruはどれほどの時間、足掻いたのだろう。
今、Hikaruの横にはWakanaとKeikoがいる。

♪風に向かい破れた旗を振り
君のいない道を 僕は僕の為
行くんだ…
螺旋(せかい)の果てまで…♪

「でも、ほかにやりたいこともなかったし。人生のビジョンの中に、歌手になること以外のものがなかったんですよ。オーディションに落ちても、次のオーディションに賭ければいいと思っていたし。なぜだかわからないんですけど、『なんとかなる』と思っていました。『(歌手に)絶対になる!』と思っていたんです。」(前同)

♪I’m calling 僕がここに居た証は
今もきっと君の瞳の中

 I’m calling 閉じる螺旋に逆らって
哭いて叫んで消えていく僕等は

 生きて、いるんだ
此所に、いるんだ…♪

最後のフレーズは、Hikaruの独唱。
あこがれの会場を天高く見上げ、涙をこらえながら歌うHikaruを、keikoが「がんばれ!」と言わんばかりに見守っていた。(追記:実際にKeikoの口元は「がんばれ!がんばれ!」と動いていた、という目撃証言を複数確認しました。)
Wakanaも、バンドメンバーをはじめチームKalafinaも、
そして大勢の観客が、Hikaruの歌声を聴いていた。
Hikaruは今、独りじゃない。

光、One Light

そして終演、最後の挨拶。

Hikaru「富山に生まれて、何度も夢をあきらめかけたけど。
夢をあきらめ
なくて良かった!」

そして、叫んだ。
「富山に生まれて良かった!」

会場に大勢いた富山の子供たち、若者たちは、Hikaruの歌を、言葉を、存在をどのように受け取っただろう。

生きて、いるんだ
此所に、いるんだ

Wakanaも、Keikoも、再び富山に戻ってくる、と語り、
そして去り際にHikaruも
「また帰ってくっちゃ!待っとってーーーー!」
夢の時間は終わった。
オーバード・ホールの外は、さらに雨が強くなっていた。
でも、雨雲の向こうに、星の光は輝いているはずだ。

この夜、Hikaruは一瞬だけ、歌手を夢見ていた少女、政井光に戻り、
そして富山の子供たち、若者たち…千の心の、“One Light”になった。

(補足)「ゲンゲ」トークはありませんでしたw


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