それがKeikoの“音楽”!1/22・23 8thアニバーサリー

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その時Keikoは万雷の拍手と声援を受け、今にも泣き出しそうな、感極まった表情を見せた。
しかし即座に、顔の前を両手で仰ぐポーズでおどけてみせ、毅然と、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

「感謝の気持ちは、いつも歌で、3人で。みなさんにお返しできたら。」

この言葉に、今のKeikoが、いやWakanaもHikaruも、Kalafinaそのものが詰まっている。

凱旋!Shibuya(TSUTAYA)O-EAST!

Kalafina 8th Anniversary LIVE 2016×2days, at TSUTAYA O-EAST(キャパ約1300人)。
Kalafinaのデビュー曲「oblivious」が発売された1月23日を「誕生日」とし、初の一般向けワンマンライブ(2009年8月26日)をおこなったShibuya(当時)O-EASTを会場に、2013年に5th Anniversaryとして始まったこのシリーズも、4回目。

初回(5th)の時は、「メンバーが流動的」で「『劇場版 空の境界』のための存在」としてスタートし、「初ワンマンをここで行った時は、冷や冷やモノだったね~」と言われた激動ユニットKalafinaが、「まさかの5歳の誕生日!」という喜びが素直に表れた、おめでとう!ライブだった。そのため、「ちょっとラフになっちゃったけどご祝儀だから許してね」的な部分もまた、親しみあふれるライブだった。

が、それからの3年間は、歌唱力と表現力と団結力を充実させながら、ライブ・アーティストとしてますます成長。今回はついに、「音楽業界でも評価の高い武道館アーティストが提供する、親しみのありながらも最高スペックの音楽を、一体感に満ちたライブハウスですぐ目の前で体感できる」という、恐ろしいほど贅沢なイベントへと成長した。

2daysとも本編セットリストは同じ。ここから先はMCも含めて、特別な場合を除いて特に区別せずに書いていく。

まずは、Kalafinaの名をアニメファンに決定的に印象づけた、「Magia」!
Kalafinaのホール・コンサートは、オープニングが長めの「overture」で始まり、「1曲目は何かな?」と観客を期待とワクワク感に導いていのが定番なのだが、今回は“Magia長めのイントロ”(“武道館Blue Day”で、3人が客席通路に現れて度肝を抜いた際のアレ)が短くかかるなか、3人が入場するやいきなりトップギアでの歌唱を開始。世界観への誘いという段取りをすっ飛ばし、「お馴染みさんたち、いつもの行くよ!」という、特別イベントならではの疾走感。
続く「obbligato」「identify」とアップテンポのナンバーが続き、超満員の観衆のボルテージは一気に急上昇。コンサートホールでのツアーライブや、ましてアコースティックver.とは「同じアーティストか!?」と思わせるほどの多様性を見せつけて、Kalafina生誕祭はスタートした。

「ありがとうございます、Kalafinaです!Kalafina 8th Anniversary LIVE、O-EASTへようこそっ!!!!(略)Wakanaでーす!」
最近のホールコンサートでは、落ち着いた大人の挨拶というイメージになったWakanaのMC第一声も、かつてのように弾けるように、力強い。
観客も、「Hyaooooooo!」「Wowooooo!」「ぅわかなああああああ!」のような、間違ってもオーチャードやザ・シンフォニーでは聞けない歓声で応える。

Keiko「今夜はどんな一夜になるのか。皆さんの顔がよく見える、Shibuya O-EASTで、TSUTAYA O-EASTで、(観客笑&歓声)…笑われた、めっちゃ!…そんな皆さんの笑った、口がパカーッと空いた顔もよく見えます!」
そうだよね、KalafinaにとってYuki Kajiura LIVE #2(2008.7.31)のオープニングアクトで初ステージを踏んで以来、思い出はほとんど「Shibuya O-××」だもんね、ってことが理解できてるファンたちの暖かい笑いと、とっさに「お客様の顔が、こちらかも見えています!」という観客思いのKeikoの機転が交錯する。

Hikaru「今日はねー、飛ばしていきますよ!(ニヤリ)濃いい時間にしたいと思います!」
今回のライブで2度ほど本人が口にした、「昔はしゃべりませんでしたね~」なHikaruが、冒頭から飛ばす宣言!ここまでの流れで完全理解!今夜は、ただの「生誕祭」ではない、「お祭り」だ!

今だから語れる?打ち明け話

4曲目以降は、Kalafinaの成長とともにあったアニメ作品を紹介しながら、最新アルバム「far on the water」曲を交えて展開。
04:ARIA(劇場版「空の境界」)
05:oblivious( 〃 )
06:五月の魔法(アルバム「far on the water」)

「ARIA」や「oblivious」は初期からこのO-EASTで歌ってきた曲。ソロパートが多く、それだけに3人の成長と演出の変化が著しく分かる。
伸びやかに、悲しみをたたえた表現に磨きをかけたHikaru。楽曲の深さを、凄みの域まで達する低音の響きで体感させるKeiko。女神のような歌声を、柔らかくも心に届く明瞭さで響かせるWakana。
そして最新アルバムからの「五月の魔法」で、その成長した三者が絶妙に絡み合い、Kalafinaの現在形を見せつける。

そして「今だから言える」と打ち明け話MCへ。

◆ARIA
Hikaru「初レコーディング曲。緊張しすぎてヘッドホンを左右逆につけた。」
「この8年間で変わったのは、ハモリが増えたこと。声質的になじむハーモニーというより、一定の距離をとりながら一緒に歌う感じ。」
Keiko「別メロディーで違う声質がぶつかりあう感じ。初めは違う声質が交わらなくて悩んだ時期もあったね。」
Hikaru「一人で悩んでもできないので、2人にも協力してもらって。そんな積み重ねかな。」

◆oblivious
(1日目)
Keiko「Kalafinaとしてのデビュー。発売日に渋谷のTSUTAYAにWakanaと行って『ある?ない?』と探した思い出」
Wakana「そうそう、それで買ってくれた人の後ろについていったり。」(場内爆笑)
Wakana「CD冒頭の『♪あ~ああああ~』の部分は、戸丸華江さん。自分も挑戦したけど、息が続かなくて、悔しかった。今でもあの柔らかさや浮遊感は難しい。」
Keiko「造語とかクラッシックの要素とかある、正解が分からない難しい曲。8年間ライブを積み重ねてきて、むしろ今の自分たちにこそ合った曲。…つまり、デビューシングル、難しいではないかと!(力説)」(爆笑)

(2日目)
Keiko「まだWakanaをWakanaちゃん!と呼んでた頃だね。私最近、またWakanaちゃん、って呼んでる。」
Wakaka「そう!聞こうと思ってたの!最近Keikoが私のことWakanaちゃん、って呼ぶの!どうして?」
Keiko「初心に返ろうかと…www」
Wakana「じゃあ私も…、Hikaruちゃん!(キリッ!)Keikoちゃん!(キリリッ!)」
Keiko「なんで1回ごとに眉毛がピクッて上がるのー!?」(観客大爆笑)
Wakana「私、眉毛で漢字の“八”ってできるから!(自慢)」
場内モニターに大映しになる、八の字眉!(観客大大爆笑)
Keiko「これは一芸ですね!」
Wakana「使える!…ちがいますよ、obliviousの話ですよ。」(観客大大大爆笑)

通常のホール・ライブでは見せなくなった、でもかつてのライブハウスではいつもこんなだった、素顔の3人。ホールでももう少し、こうしたグダグダと紙一重の親しみやすさが聞きたいなあ、と思いつつ、次の曲へ。

Kalafina史を彩る名曲と今年の抱負

07:満天(Fate/Zero)
08:to the beginning ( 〃 )
09:ひかりふる(劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〔後編〕永遠の物語)
10:君の銀の庭(  〃 〔新編〕叛逆の物語 )
11:misterioso( 〃 )

「劇場版 空の境界」パートの次は、「Fate/Zero」「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」パートと続く。Kalafinaの8年の歩みを確かめるように、名曲の数々が登場…って、これ武道館2dayクラスのベスト盤セトリじゃないか!?しかもそれを、武道館や国際フォーラムAを震わせる3人とバンドメンバーが、こんな間近に見えるライブハウスでだぜ!?…このAnniversaryライブの贅沢さがひしひしと実感される。
ファンクラブに入ってない方は、ぜひ入会してこれを体感できるチャンスを得て欲しい。(ただしオールスタンディングですが…。)

このパートでは、個人的には「ひかりふる」が心に残った。Wakanaがかつて抱えた悩み、「Kalafina像への模索」から抜け出すきっかけになったと語る(別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)p31)曲。レコーディング時、梶浦由記とともに「一つ一つをクリヤにし、完璧にする」作業を経たことで、自分の立ち位置が見えたというWakana。
でも、レコーディングはそこで終わっても、ライブはそこからが始まり。3年間、何度も何度もライブとリハで歌い続け、重ね続けて、今の3人の音楽がある。そんなことを実感した。

そしてMCでは、2016年の抱負発表!
Wakana(1日目)
W「一人で遠くへ行きたい!兄がオーストラリアにいるので、まずはそこ。でも、乗り継ぎとか 、荷物ロストした!とか…(想像)…、怖いー!」
K「すぐLINE来そう。」
W「『今飛行機乗りました』『降りました』『乗り継ぎしました』…」(爆笑)

Wakana(2日目)
W「Kalafinaとしては、歌い続けることを目標にしている。その同じ気持ちを持ち続けることが、毎年の課題。ひとつの同じ気持ちを持ち続けるのはすごく大変。たとえば、31アイスクリームを好きでいることは簡単なんだけど…、え?話が違う?強様(ドラム・佐藤強一)も31アイスが好きです。私は最近、ホワイト・マカデミア・チョコレートが好きです。でもチョコチップがなぜか期間限定で…。何の話だっけ?」
K「抱負です!」
と、久々のグダグダ展開www。

一方、Hikaruは安定かと思いきや、意外な展開が…
H「ファンクラブの会報に書いたんですが、昨年はあまり活字を読めなかったので、活字をたくさん読みたいと。あとラジオでKeikoさんが富士山に登る!って言ってて、誘われたので…。ホンキで考えたいと思います!」(場内大歓声!)
…Hikaruを熱いまなざしで見つめるKeiko!
見つめ合う2人。歩み寄ると、ひしっ!とハグ!!!!!!(場内、悲鳴に近い大歓声!)
…一方、ガクッとヒザをつき「ふ、富士山ですか…」という表情のWakana。そこに場内「Wakana!Wakana!Wakana!Wakana!」のまさかのWakanaコール!
これを受けて
W「…安心してください!…行きますよ!2人がいるなら、どこにでも行ける!」
…3人、熱い熱い熱い、ハグ!
K「2人がいると心強いです。(ニマニマ)」

ところが、2日目にはHikaruにも変化が…。
「ホンキで考えます!」と力説したあと、
K「まずは呼吸から?酸素が薄くなるから、筋トレして…」
H「……あ~~~」Hikaru、肩を落として脱力!www
そこにフォーローに駆けつけるWakana!
W「私も行くから!3人なら何でもできるから!嫌いな食べ物でも、体にいいよ、と言われると食べれるから!」
K「Wakanaちゃんの攻略本みたいwww」
H「じゃあ、いざという時は、『体にいいですから』でwww」
W「体にいいよ!と3人で行こう!は私の暗示ですから!」
K「……こんな感じで、ずっとやってきてるんですwww」

3人の仲の良さと積み重ねてきた信頼の絆が伝わる、ライブハウスならではのKalafinaトーク劇場。
そして、ここからのKeikoの観客の巻き込み方が見事である。

K「…2人も水分補給してね…。ここ、ライブハウスじゃないですか?飛ばしていこうではないかと。みんなついてきてくれますか!?」(歓声)
K「(ニマニマ)じょーし!」(キャァァァァァァー!)
K「(普通)だーんし!」(ウおォォォォォォォ-!!!)
K「(キリッ! )One Light!」
うわわわわ…カッコイイ…!!!

観客を巻き込む技術…Keikoが目指したアーティスト

2015年後半、数々のライブやフェスティバル系イベントで「Kalafinaってカッコイイ!」とを見せつけた「One Light」。3人が離合集散を繰り返し、腕を寄せて天を指し、そしてHikaruの「♪ボクは、ゆける!」(バキューン!)でクライマックスを迎えるステージングは、まさにライブ毎に変化・成長してきた。今回はそれを理解している観客ばかりとあって、(バキューン!)の瞬間、遠慮もためらいもなく「キャ~!!!!」と女性たちの悲鳴が鳴り響く。

そして、「believe」「destination unknown」「Kryie」とアップテンポの曲が怒濤のように続く。年末のContdown JAPANでこれでもか!と見せつけた、Kalafina パワフル・バージョンだ。狭いステージを右へ左へ、そして観客席の最前から2階まで、挑発し、煽り、でもそこには楽曲の深みをしっかりと載せている。ラフさで観客を乗せるのではなく、計算された表現に普段より多めの情熱で、観客を巻き込んでいく。
これが、悩み、努力し、スキルを磨き、絆を深めた、Kalafina8年の積み重ねだ。

その8年はKeikoにとって、ラフな煽りとスキルに基づく表現は全く異なるものだと思い知らされ、そのスキルを積み上げた間でもある。

Keiko「Kalafinaが始まる前には、ロックなユニットもやっていました。でも、ダメでしたね。自分の信念がない人がそういうことをやっても、ただの大暴れしている人になってしまう。」(別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)p37)

10代半ば、安室奈美恵やSPEEDに憧れ、ダンス・ボーカルに熱中していたKeiko。学校では後輩たちの憧れ。スクールでも特待生扱い。順風満帆な青春を過ごしていたKeikoは、高校時代に新たな憧れを見つける。尾崎豊だ。
夢や理想を見せるアイドルやアーティストから、信念をメッセージとして歌に乗せる尾崎へ。歌を通して伝えられることは無限大だと気づいたKeikoは、「こういう人になりたい」と願った。
しかし、ガールズ・デュオ・ユニットでそれを実践しようと路上ライブなどで奮闘するが、観客は増えず、相方の離脱によって解散。

K「尾崎さんのライブって、メチャクチャやっているように見えて、決してそんなことはないんです。歌詞も世の中をいろんな角度から見た上で書いてるし、すごく繊細で敏感な方なんだと思います。(中略)(それまでの私は)やりたいことだけをやって、自分ときちんと向き合って考えることをしてこなかった。そんな人がどんな歌を歌っても、安っぽい、軽い音楽のままだったと思います。そんな音楽に人は心を打たれないですよね。」(別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)p39)

そして、Kalafinaへの参加。梶浦由記、Wakanaとの本格的な邂逅、Hikaruとの出会い、そしてKalafina1周年を迎える頃に発表となった、ライブ活動の開始。2009年3月8日、SME乃木坂ビルでの「Kick Off Greeting Vol.0」から始まり、六本木morph-tokyo、Shibuya O-WEST、そして8月26日、初の一般ワンマンライブ「Kalafina LIVE 2009“storia”」@
Shibuya O-EAST…。Keikoの音楽が大きく動き出す。

K「最初の頃のライブは思うように全くできていなかったと思います。そもそもKalafinaのコーラスワークはレコーディングで声を重ねて作られるもので、それを実際に生でやろうという発想がなかったですから。でも、チャレンジする機会を頂いたので、どうにかしてでもやらなきゃということで、当時は週6~7日くらいスタジオに入って、3人で練習していました。ガムシャラでしたね。みんながそうやって同じ気持ちになった。そこは今につながっていると思います。」(別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)p40)

魂の中にある一条の光を信じて

Anniversary LIVEは終盤クライマックスへ。ファンなら一気にテンションが上がる、印象的なイントロが奏でられる。3人がガムシャラに練習を重ねる日々の中、ライブの度に欠かさず歌われた曲。最初のアルバム「Seventh Heaven」でKeikoが主旋律を担当し、ライブの初期から現在に至るまで、代表的ロックナンバーとして常にライブを支え続けてきた曲。
「音楽」!

♪僕に見えないものが君には見えていたの
太陽が昇る場所までまだ遠い

魂の中にある一条の光を信じて
叫びたい言葉さえ無いけれどただ叫んでいる
それが僕の音楽

魂が果てるまで一条の光を信じて
泣きながら歌うんだ眠れない夜の向こうに
きっと君の音楽

明日への近道がどうしても見つけられない
一つずつ 一歩ずつ そんなの分かっているけれど
太陽が昇る場所へ

君の手を取る為に闇雲にただ愛を信じて
僕達は手探りでじたばたとまだ旅の途中
魂が果てるまで一条の光を信じて
出鱈目な旋律が溢れ出す夜の向こうに
きっと僕の音楽♪

梶浦がこの詩を書いたのはKalafinaがライブ活動を開始する前で、彼女たちがガムシャラに練習したと語っている時期は、おそらくはもう少し後。ということは、決してKalafinaの3人に寄せた歌詞ではないのだろうが、今にして思えば、ライブ初期の悩み、苦闘する彼女たちに、妙に符合する。

明日への近道なんてない。自分たちが何者なのかもわからない。ただガムシャラに練習し、一つずつ、一歩ずつ、魂が果てるまで一条の光を信じて、太陽が昇る場所へ。

初のO-EASTワンマンから約7年、さまざまなライブで歌い、スキルを積み重ねてきた「音楽」は、その楽しみ方が分かっているファン達の熱気との相乗効果によって、すさまじいまでのパワフルな演奏になった。普段から梶浦由記もKalafinaも「ライブの音楽を作るのは、今日、ここにいるあなた(観客)、あなたたちひとりひとりがいるから、このライブが生まれる」と語るが、まさにその通りの「音楽」だった。

K「レコーディングされた曲がお客様に届いて、その曲と共に生活したり、いろんなエピソードをお手紙やアンケートなどで知ることができて、それを知ったことで、自分たちが歌った曲が、どんどん大きくなっていってるのを感じたんです。自分たちが声を吹き込んだ音楽が、自分たちの想像以上の音楽になって返ってくると知った時、そこからライブを続けて、お客様と音楽を創っていくことを続けていきたいと強く思うようになりました。」(別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)p43)

ガムシャラに目指していた音楽から、スキルを積み重ね、観客と創っていく音楽へ。
楽曲「音楽」は、この先、何処まで進化していくのだろう。

「感謝の気持ちは、いつも歌で、3人で。」

熱狂の5曲を終え、バンドメンバー紹介。
H「今野均!櫻田泰啓!高橋Jr.知治!」、W「佐藤強一!是永巧一!大平佳男!」
K「今、紹介したミュージシャンたちは、私たちが右も左も分からない頃から、『大丈夫、俺らがいるから』と支えてくれる、スーパースターたちです!もう一度大きな拍手を!!!!」 (盛大な拍手)
K「(W、Hに)この6人じゃなかったら、今の私たちは歌えてたかどうか、わかんないね。」
K「お客様たち、おひとりおひとりも。皆さんがいなかったら、8周年を迎えられたかどうかわかりません。ここ、O-EASTが、ライブハウスが私たちの原点。ライブ・アーティストとしてやっていきたいと、3人で決意したあの頃から、止まらずに走って来れたのも、みなさんが応援してくれているからです。これからもみなさんと歩んで行けたらと思います。どうぞ、よろしくお願いします!!」

観客からは、延々と、誰かが止めないと終わらないかのような拍手が続く。
2日目では、Keikoの感極まり、涙をたたえた顔が、場内モニターに大映しになった。
そこで、冒頭に書いた動きが起きた。

Keikoは顔の前を両手で仰ぐポーズでおどけてみせ、毅然と、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「感謝の気持ちは、いつも歌で、3人で。みなさんにお返しできたら。」

実は最近、Keikoがライブで感極まる場面をよく見かける。昨年12月24日の「with Strings」(Bunkamuraオーチャード・ホール)では、万雷の拍手を受けたのち、MCで語り始めるはずだった(?)Keikoが後ろを向いてしまい、舞台上で数秒間、沈黙ととまどいの空気が流れ、なんとHikaruがフォローでMCをするという場面があった。

極端なことを言えば、観客の気持ちをつかむ手段として「涙」はオイシイ。
しかしKeikoは絶対に観客に涙を見せることを、頑なに拒否してきた。
その理由が、彼女の口を突いて出たのだ。
「感謝の気持ちは、いつも歌で、3人で。

K「ライブアーティストと自ら公言してきた私たちが中途半端なパフォーマンスを見せるわけにはいかないですからね。今回は自分たちでハードルを上げているようなところがあるんですけれど」(ライブパンフレット「Live Tour 2015-2016 “far on the water”」)

観客への感謝とライブ・アーティストとしての矜持、そして3人の絆。
私は、この9年目のKeikoの決然としたつぶやきを、おそらくずっと大切に覚え続けると思う。

「アレルヤ」~そしてアンコール

ライブは本編 最後の曲の紹介へ。
K「最後の曲は、今日お集まりの皆さん全員の明るい未来を信じて。『もがいて、もがいて』という私たちも見ていただきたいし。そんな気持ちを込めて歌わせていただきます。…『アレルヤ』」

未来を信じ、力強く進み続けるKeiko。続いて、苦しみながら生きる者を慈しむかのようなWakana。そして、ひたすら懸命に生きるHikaru。3者の歌声が響き、絡み合いながら、絶望に包まれながらも希望を信じ、免れ得ない死を見つめながら小さな生を輝かせたい…、そんな祈りを観客の心へと届かせる。
8年という、人の一生を80年とすれば、その1割を占める、決して短くはない時間をかけて、ここまで成長したKalafina。まさにAnniversaryにふさわしいメッセージが詰まった曲で、本編は終了した。

そしてアンコール。
両日とも、ライブグッズTシャツにデニム、そしてグッズのパーカーを腰に巻いたりした普段着モードのような3人。そうそう、かつてはアンコールは常に、グッズTシャツで現れたんだよな~、とこれまた古参ファンが涙を浮かべる演出。

セトリは、1日目は近年の盛り上がり曲「heavenly blue」ともうひとつの祈りの代表曲「光の旋律」。2日目は、「O-EASTに欠かせない曲」として「progressive」と「sprinter」。
特に2日目のこの選曲は、初期のライブ活動において、重要な位置を占めるアップテンポ曲。

梶浦「ライブを始めた頃は、『sprinter』という曲に、“君に会いたい”という歌詞の部分があるんですが、『せっかくおいしい歌詞なんだから、必ずお客様を誰かひとり指差して』(中略)『指を指された方が必ずKalafinaを好きになってくれるように、そういうつもりでやって』って(笑)。」(Kalafina Recordp88)

それから数年経ったが、今もこのムーブメントは変わらない。「自分を指した!」「絶対目が合った!」…ファンにとっては、もしかしたら一生に一度かもしれない、大事なコミュニケーションだ。

続いて、Hikaru恒例のグッズ紹介。
Hikaruの押しが強いんだか弱いんだか、丁寧なのに強引な、名物トーク。
K「このグッズ紹介もライブハウスからでしたね。」
H「はい、全くしゃべらなかった、あの時代!(なぜか力入るwww)」
K「当時はずーっと、Wakanaちゃんがしゃべっていました…。」
1日目はこの後、Wakanaがジブリキャラの物まねという、ライブハウス初期ネタに。

ところが2日目は、Tシャツの裾を縛るのに夢中で、K・Hの方を見ていないW。
W「…き、聞いてるよ!(汗)」
K「Wakanaちゃん、みんなが見てるよ~。」
W「うわ~、ホントだ~。どうしたのみんな~?」
(観客大爆笑)
W「私、変わんないよね。しゃべんなくなった、なんていったらカッコイイのに。」
K「そんなことないよ。変わらないでいてくださいよ。」
W「わかりました!ペチャクチャペチャクチャ…」(爆笑)
…いやホント、この漫才、普段ももうちょっと聞きたい気もするwww

そしてアンコール最後の曲へ。
K「みなさんのそばに私たちがいて、私たちのそばにみなさんがいるという、そんなつながりを感じさせる暖かい曲。もしよろしければ『♪ラララ』のところは一緒に歌ってください。『五月雨が過ぎた頃に』。」

まるで手を取り、一緒に散歩するかのような身近さを感じさせる曲に、観客は手拍子で応える。最後は「♪ラララ~」の合唱。ライブハウスでのFCイベントならではの演出だ。

それがKeikoの“音楽”!

カーテンコール。
メンバー紹介と「ありがとうございましたー!」のあとは、「未来」がかかるなか、3人がそれぞれ3方に挨拶。
上手・W「1・2・3の日に一緒にいてくれてありがとうございました-!」
下手・H「8周年、みなさんのお顔を見ながら歌うことができて本当に、幸せでした。」

そして、センターでKeiko。2日目、彼女はなぜかマイクを使わず、地声で観客に向かい叫んだ。
K「みなさん、おひとりおひとりの表情を感じられました!初心に戻ることができました!9周年、10周年と先は長いですから、みなさんついてきてください!ありがとうございました!!!!」
割れんばかりの拍手と歓声。
Keikoは舞台袖まで小走りすると一礼してスッと消え、Hikaruはバンドメンバーの台に乗るやジャンプし、全身で喜びを表し、Wakanaはいつもより大きなモーションで投げキッス。3者3様。それでいてバランスがとれている。どこまでも素敵な3人だ。

燃焼し尽くした熱気に満ちた観客の間を抜け、会場を出てからも、私は満足感と共にKeikoのあの瞬間をリフレインしていた。
「感謝の気持ちは、いつも歌で、3人で。みなさんにお返しできたら。」

「私は低音の担当なので、私が少しでもブレると全体の芯がブレるんです。(中略)私は自分の役割に徹しようと思っていた時期もありました。けれど、今はもっとボーカリストとしての自分を出してもいのかな…、出さなきゃいけないんじゃないか…と思うようになりました。(中略)Kalafinaの中で自分に何ができるのか、曲を良くするためにどこまでやれるのか。それは自分との勝負ですし、永遠の課題だと思います。」(別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)p44)

ブレずに冷静に。己に厳しく、そしてもっと高みへ。
WakanaとHikaruと、チームKalafinaと、そして観客とともに、もっと素晴らしい音楽を創り出せることを信じて。
涙など見せている場合ではない。

♪君の手を取る為に闇雲にただ愛を信じて
僕達は手探りでじたばたとまだ旅の途中
魂が果てるまで一条の光を信じて

それが、Keikoの「音楽」。Keikoの生き方なんだな、と。

私も、そんなKeikoを、Kalafinaを信じて、9周年、10周年、いやその先までついて行きたいと願った。

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