Kalafinaの9年半と「いま」~“Harmony” Premium LIVE vol.1 ビルボードライブ東京~

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<目次>
プロローグ:ひかりふる〜Kalafinaの“いま”
①オープニング
1.「世界標準」に、Kalafinaが立つ
2.開幕曲はまさかの…
3.初めての衝撃とたたずまい
4.ピアノ・アコースティック in ビルボードの意義
②Kalafinaが積み重ねてきた時間
1.ファンとのリラックスと優しさの時間
2.サクちゃんと築いた信頼の時間
③それぞれのソロ、それぞれの歳月
1.Wakanaの歳月~原点の確認~
2.Hikaruの歳月~葛藤と決意~
3.Keikoの歳月~「いま」のゆらぎを歌うこと~
④「まどか☆マギカ」メドレー、そして…
1.今、ここでしかできない「ひかりふる」
2.アンコール~積み重ねていく笑顔~

プロローグ:ひかりふる〜Kalafinaの“いま”

その時ふいに、Kalafinaの3人の背後、ステージ後方のカーテンが左右に開き、光きらめくビル街の夜景が現れた。
「ひかりふる」最後のクライマックスでのサプライズ。
日曜で明かりはやや少なく、台風の影響でやや霞みがちではあるが、このような高層ビルの夜景を背景にしたゴージャスなKalafinaは、この9年半で初めてだ。
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K「もうちょっときれいなはずなんだけどな〜。まあKalafinaだからいいか!」
これが絵ハガキのようなみごとな夜景、別の言い方をすれば、条件さえよければいつでも見られる夜景、ではなく、2017年9月17日午後9時・大型の台風18号の接近で東京も雨に加えて強風域に入ろうとしている限定バージョンの夜景だからこそ、「Kalafinaあるある…ライブの日は悪天候」な、Kalafinaっぽい。
あらゆる会場、あらゆるコンディション、その時々でしか感じられない今のKalafina。
無数に積み重ねてきたライブ=“Kalafinaの現在形”がまたひとつ記憶された。

①オープニング

1.「世界標準」に、Kalafinaが立つ

ビルボードライブ東京。
「すべての夜を音楽という名の伝説に変える。世界標準のクラブ&レストラン」(公式HP
とあるように、1894年に発刊された音楽業界誌であり、アメリカで最も権威があるとされる音楽チャート「ビルボード」の名を冠した、世界標準のクラブ&レストランとして2007年に開業。
国内外の有名アーティストの名演奏を、優れた音質と洒落た雰囲気で。しかもキャパ300人というコンパクトな空間で、アーティストをすぐ間近に楽しめる、濃密な音楽空間だ。
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ここで、Kalafinaが歌う。
ビルボードライブ大阪公演と併せ、一流アーティストの証明ともなるこの記念碑的なライブが、一般向けでないことは残念だが、キャパの関係上やむを得ない。
Kalafinaファンクラブ“Harmony”設立記念として限られたファンだけが目にする、まさにプレミアムなライブが期待される。

2.開幕曲はまさかの…

9月17日(日)夜の部(第2部)。
開場から着席し食事。
記念のスペシャルカクテル「ひかりふる」を飲みながら、午後7時30分、Kalafina史上(たぶん)最も遅い開演時刻を待つ。
DSC_0041(「ひかりふる」:青白いシロップにパッションフルーツのフレーバーを加え、深い夜空を表現。さっぱりとして飲みやすく爽やかな甘さに包まれるスペシャル・カクテル。)

やがて照明が落ちると、下手からまずピアノの櫻田泰啓が入場。
今回、アコースティックとはいえ、演奏に弦もパーカッションもなく、ピアノのみのバージョンはKalafina史上初。
かつてリリース・イベントや富山の屋外イベントで、同じく櫻田のキーボード単体というのはあったが、それは無料イベントの制約上のものであり、本格的なピアノのみのKalafinaコーラスは今回初めてではなかろうか。

続いて、Wakaka、Keiko、Hikaruが入場。
会場の落ち着いた雰囲気にあわせ黒のシックな、しかし肩や背中の露出が目を引くドレスだ。

櫻田のピアノが1曲目のイントロを奏でる。
過去のアコースティックで聴いた覚えのない、ドラマチックな旋律。
そして…、

♪夢を見て僕らは泣いた 涙を持たぬ筈の 鋼の心で

まさかの「百火撩乱」。
アップテンポの最新シングルを、いきなりアコースティック・バージョンにして披露するというサプライズだ!

3.初めての衝撃とたたずまい

「世界標準」のクリアな音空間に、運命を司るようなKeiko、刃のように切り込むHikaru、そして悲愴に満ちたWakanaの歌声が、櫻田の劇的な演奏を背景に響き渡る。
オリジナルのバンド・バージョンが分厚い演奏で怒涛のように楽曲の世界観を響かせる一方、大胆にアレンジされたピアノ・アコースティック版は、最小限のシンプルさゆえに、4人ひとりひとりが持つ表現世界が最大限に引き出され、1音たりとも聞き逃せない緊張感で展開されていく。
特に間奏の造語パートは、Wakanaがゆったりとしたソロで、戦いに命を燃やし散っていく者の悲哀を極限まで歌い上げ、そして後半は3人の力強いコーラスになだれこみ、櫻田の叩きつけるような激しい音色でフィニッシュ。

衝撃的なスタート曲のあとは、挨拶のMC。

W「ここに来るのはKalafinaは初めて。近い距離でお会いできて嬉しいです。高いところにも座席あるんですね。今日はたっぷり楽しんでいってください。Wakanaでーす!」
K「今日は天気が心配でしたけど、ひとりでも多くの皆さんが楽しんでもらえるよう、楽曲を用意しました。Keikoです。」
H「奥の人も、手前の人も、みんな見えてますからね。Hikaru視力2.0ですから、目をそらさないでくださいね。ちょっとオトナの感じですけど、Hikaruはいつも通りいきたいと思います。」
そしてHikaruが櫻田泰啓を紹介し、次曲へ。

2曲目はゆったりと静かな“sapphire”。
原曲も弦とピアノが印象的なスローバラード。
さらに繊細にWakanaとKeikoのハーモニー、そしてHikaruのソロパートが混ざり合い、この会場ならではの奥深さをもった音色で染みていく。
櫻田のピアノの最後の1音も長く静かに響き続け、観客は音が消え入るのをじっと待ってから一斉に拍手。
Kalafinaがかつて歌ってきた、どのホールやライブハウスとも異なるたたずまいだ。

4.ピアノ・アコースティック in ビルボードの意義

続いて3曲目は“red moon”。
ここまでの落ちついた照明がガラリと変わり、真っ赤なピンスポットが3人を照らす。
Kalafinaのダーク・ファンタジー面の代表曲。
徐々に重なり合う3人の声のなかで、Hikaruの演劇を思わせるソロがメリハリをつける。
激しく迫力あるハーモニーとピアノ、4人の熱がぶつかりあい弾けあい、濃密でクリアなビルボードに響き渡ると、観客を圧迫感のある悲しみと嘆き、そして滅びの浄化へと誘う。
これまで数限りなく歌われ続けてきた“red moon”のひとつの完成形が、すさまじいまでのポテンシャルで発揮された。

歌が終わるや、3人はしばし沈黙。
やがてKeikoが「はぁぁぁぁぁぁ〜」と息を吐く。
K「…闇な感じ…雄叫びったんでね…。」
圧倒的な歌唱と音圧からの解放に、観客からも思わず笑い声が漏れる。

これまで、Kalafinaアコースティックはさまざまなシチュエーションで、それぞれ独自の世界を描いてきた。
湘南海岸「音霊」では、パーカッションとベースとキーボードに、自然の波音までが参加する、夏の海の想い出に残る楽しさを。
“Spring Premium”はコンサートホールで、弦のカルテットとピアノで、春の風と緑の爽やかさを。
クラッシック・ホールも使った“Christmas Premium”は、冬のロマンチックで聖なる世界を。

百火撩乱」“sapphire”“red moon”という開幕3曲で、これまでとは全く異なる、激しく、繊細で、濃密なビルボードならではのアコースティック世界が現出された。
今の、そしてこれからも変わりゆくKalafinaの新たな姿を見せつけ、ビルボード・ライブはスタートした。

②Kalafinaが積み重ねてきた時間

1.ファンとのリラックスと優しさの時間

深い吐息に続いてKeikoのMC。

K「今回、ファンクラブ向けということで、…今までやれてこなかった感じでやろうかなーと思って…。」
“red moon”で一度出し尽くしたせいか、または会員限定イベントのお馴染み感のせいか、Keikoの口調はまるで目の前の友人に思いついた言葉をそのまま語りかけているかのように、訥々と気さくな印象だ。

K「“red moon”のようなダークファンタジーの世界は、今はKalafinaの定番と言われるんだけど、2010年当時はどう表現したらいいのか模索して。少しずつこの世界観とか、たとえば歌詞にある『喰らう』という言葉遣いをどう表現するかとか、7年間かけて少しずつ築き上げてきたんですよね。なのでもう『オーラスか?』というエネルギーで歌っちゃって。」
W「みんなのスーパーサイヤ人ぶりがスゴイよね。」
K「こういうファンタジーの世界を歌声だけで作れるようよう、まだまだ頑張りたいと思います。」

MCはWakanaに移り、雰囲気は転調。
W「さて、今日はKalafinaにふさわしいお天気じゃあありませんか。(観客爆笑)みなさんライブに行くと決めた3か月前からカサを用意していたのでは?雨が多くてすみません。(笑)そこでね、夏ソングで皆さんと夏の想い出を作りたいと思います。」
H「そこで皆さん、自分のお席の裏を見てください。」

観客席の座席の下にひとつだけ封筒が貼られてあり、そこに入っている紙に曲名が3つ。
「1.屋根の向こうに 2.夏の林檎 3.夏の朝」のなかから、封筒を引き当てた運の良い客が次曲を選べる、という趣向だ。

W「なんて責任重大なんでしょ〜www」
H「プレッシャーかけてるwww」

お客さんが選んだのは、「屋根の向こうに」。
原曲じたいがアコースティック調であるだけに、ほぼオリジナルに近いアレンジ。
まるで青空を吹き渡る風のような爽やかさが、会場を穏やかさで満たす。

続く「むすんでひらく」は、弾むような力強い櫻田の音色に、リラックスした表情の3人が声を合わせていく。

♪君は誰と出会い 僕は誰を想う
暖かい風を呼びながら♪

まるで木漏れ日のような、放射状の光が3人に降り注ぐ。
爽やかさは““Spring Premium”に似ながらも、オトナの空間が生み出すビジュアルとサウンドが、お洒落な心地よさを演出する。

2.サクちゃんと築いた信頼の時間

そして、ジャズナンバーのような激しく跳ねるピアノのイントロ。
Kalafinaでは聴き慣れない音の運び…“monochrome”!

アコースティック(おそらく)初アレンジは、これもオトナの空間ならではのジャズナンバーのような仕上がりだ。
3人もまるで、ハリウッド映画で描かれるナイトクラブの歌姫のようだ。

小悪魔っぽく誘う歌声のHikaru。
聖女の歌声で「遊びたい」と求めるWakana。
身をくねらせ艶やかに舞い歌うKeiko。
バレリーナのようにKeikoがクルクルと廻るたび、栗色の髪がふわりと広がりライトに輝く。
カッコイイ姿と豊潤な歌声に、改めて3人に惚れ直してしまう。
まさに、この会場ならではのジャズ風オトナのKalafina。

直後のMCで、この大胆アレンジは櫻田=サクちゃんによるものであると紹介された。
3歳でエレクトーンを始め、10歳で作曲した楽曲がフィギュア・スケート伊藤みどり選手のオリンピック使用曲に選ばれ、地元札幌では評判の天才少年。
プロのピアニストとなってからは、嵐やゆずなど有名アーティストのツアーやレコーディングにも参加。
最近は、いま絶頂の域にある星野源のツアーに参加するなど、ひっぱりだこの才人だ。
そんな櫻田が2010年からKalafinaライブに帯同し、今年で8年目。
長い時間をかけて築き上げた信頼感の強い関係だからこそ、この大胆なアレンジにまでたどりついたと予想できる。

“Kalafinaの現在形”を感じさせる、豊かな一曲。
この“monochrome”アレンジ・バージョンが2days、4公演しか聴けないのはあまりにもったいない。

③それぞれのソロ、それぞれの歳月

1. Wakanaの歳月~原点の確認~

この夜一番の大拍手の後、Keikoが3曲を振り返り、Wakanaへ。
W「私たちにとって、ファンの皆さんがいて嬉しい……、ごめんなさい小学生みたいな感想で。
ファンクラブ“Harmony”を作った理由は、私たちのいろんな面をお見せすることができたらなあ、という想いからでした。
ここからは、いままでのライブでやったことのない、ソロのコーナーを作ってみました。
3人ひとりひとり好きな曲を選んでお届けしたいと思います。まずは私、Wakanaから。」

KeikoとHikaruは、上手側ステージに置かれた椅子に座りWakanaがひとり、ピアノの横へ。
Kalafinaではめったに見られない光景だ。

W「グランドピアノ大きいですよね。私の家のは小さかったんですが…。(ひとり語りが続かず)ごめんなさい、ひとりで話すのは緊張します。
Kalafinaは『劇場版 空の境界』でデビューしたんですけど、その後に銀色のジャケットの“Re/oblivious
というリミックス盤を出しています。
もう9年半前ですけど。皆さん、その頃思い出せますか?思い出せないくらい長い時間ですよね。
実はそのなかの「君が光に変えて行〜acoustic ver.」は、私がひとりで歌っています。
自分の中のKalafinaの原点ですが、今日が初めてのお披露目になります。」

限定ミニアルバムとして発売された“Re/oblivious”。
デビューシングルの“oblivious”「君が光に変えて行く」「傷跡」のリミックス・バージョンや、レアな“interlude 01”“ interlude 02”“finale”の計6曲が収録され、2008年4月23日に発売。
WakanaとKeikoがKalafinaとして初めてその名を表した「Revo&梶浦由記 Presents Dream Port 2008」はこの直後。
そんな最初期に、KeikoとWakanaが交互に主旋律を歌うオリジナル版を、Wakanaのソロで構成したのが「君が光に変えて行く〜acoustic ver.」。
梶浦由記が、「『コーラスもハーモニーも入っていない唯一のボーカル・オンリーKalafina曲』なのかもしれませんね。」(「Kalafina Record」 p124)と語る、レア曲だ。

そっと静かに歌い出し、1音1音を愛おしむように丁寧に歌い進めるWakana。
ハーモニーとソロボーカルでは発声が違う、とよく聴くが、Wakanaは自分ひとりで世界を担うかのように、哀しみと歓び、静と動をしっかりと表現豊かに歌い分けていく。
デビュー当時は神秘的だがクールで落ち着いた印象の歌声だったが、今は神秘性はそのままに、緻密さと豊かさと暖かみをもった歌声で、ソロ曲を歌い上げていく。

♪こんなに明るい世界へ 君が私を連れて行く
まぶしさにまだ立ち竦む 背中をそっと抱きしめる

かつてソロシンガーを目指し、Kalafina参加時もユニットであることにとまどいを隠せなかったWakanaは、Kalafina3年目にこう語っていた。
「こうやってみんなに出会えて、ライブをするようになっている自分が今いるんだな、って。『私たちの今があるのは、今までやってきたことがあるから』と考えることができれば、今の状態はすごく幸せだし、それを再確認できるんです。」(「Kalafina Record」 p038)

♪信じることの儚さを 君が光に変えて行く
目覚めた朝には涙が 宝石のように落ちてく
未来の中へ

9年半前の不安を、仲間と共に光へと変え、現在へと紡いでいったWakana。
歳月の積み重ねの末に輝く、宝石のようなソロボーカルだった。

2.Hikaruの歳月~葛藤と決意~

続いてHikaru。
これが、静かだが重く、息をのむようなMCになる。

H「今回、梶浦さんやKalafinaとの出会いの曲、“ARIA”を歌うんですけど…。
一番最初にレコーディングした曲なので、自分の声が音源として残っていて。
いまの自分には、当時の声は無いけれど…。
この話するの4回目なんですけど、…体が震えちゃうんですね…。」

ここ最近、ライブでHikaruの高音が出ていない、という指摘はファンの間でも為されてきたが、まさか本人がステージ上で言及するとは。
Hikaruは明らかに顔がこわばり、目を潤ませ、ためらいを隠せない表情でいる。

H「あの頃の声、戻ってこないかなー?とも思うんですけど。
でも9年、Kalafinaとしていろんな経験をして、皆さんと歌を作ってきたからこそ、今の“ARIA”が歌えると思っています。」

紫の薄いスポットライトの中、静かに歌い出すHikaru。
かつての音源では、ガラス細工のような繊細さと均質さで孤高の「独唱」を奏でていた歌声は、今は半音(?)低い旋律を、丁寧に押さえるように歌い方に変わっている。
しかし、9年前は持っていなかったさまざまな声の表情を駆使しながら、初めはゆっくり訥々と、やがて孤独な魂が光の先に何かを求めるように歌い上げていく。

♪消えたものと 変わらぬもの
無惨な空が光る

9年前と現在。
消えたものと変わらぬもの。
Hikaruは、歌い手として認め難い時の流れの酷さを正直にさらけだし、その上で、今のHikaruの最大限の独唱(ARIA)へと踏み出した。

♪孤独の船を漕ぎ 篝火は嘆き集う
伽藍の世界には 数多のARIAが響いている

歌い終わるやHikaruは、何か大切なものを両手で抱きしめるような姿勢で、うつむいたまま。
やがて、笑顔で顔を上げた。

H「普段は3人で歌っていて、2人がいるから感じる『独り』を歌っているんですが、今、本当に独りだとどう歌うんだろうな?と考えて。
すごくピュアだったり、いろんな経験をしたから感じる部分だったり。
自分にとっても新鮮な“ARIA”で。
この機会をいただいて、皆さんに聴いていただいて良かったな、と思います。
ありがとうございます。」

拍手の中、最後はKeikoだ。

3.Keikoの歳月~「いま」のゆらぎを歌うこと~

K「…息ができなくなるかと思ったじゃないか〜(笑)。
こうしてメンバーの背中を見て、ただただ歌を聴くというは今回初めてで。
この2人と一緒に歌えるのは、誇らしいと思いました。
私は、梶浦さんとの出会いの曲、FictionJunction KEIKOとしての曲をお届けします。
風の街へ』。」

Keikoが、Kalafinaの前のイトクボ、よりも前の2005年、「ツバサ・クロニクル」で初レコーディングした原点の曲。
まさかFJ曲を、Kalafinaイベントで歌うとは。
ファンクラブイベントならではの選曲だ。

♪時の向こう 風の街へ
ねぇ、連れて行って
白い花の夢かなえて

優しく、伸びやかに想いを載せた歌声。
身体を下手斜めに向け、そこにいる恋人に語りかけているかのようだ。

やがて身体を正面に向けるや、力強く、そして想いを遠くへと歌い上げる。

♪まだ知らない夢の向こう
ねぇ、遠い道を
二人で行けるわ
風の街へ


(FictionJunction KEIKOとして「風の街へ」を歌う映像収録)

歌い終わると、ファンと観客というより、まるで友人と雑談するかのように、思いを語り始める。

K「音楽って不思議だなー、と思う時があって。予期せぬ時に心動かされたり、心洗われたりしませんか?
今回、FJの曲なので、Kalafinaのステージで歌うのはどうかな?と思って梶浦さんに相談したんですけど。
梶浦さんは、「どこで歌ってくれても嬉しいよ」と言ってくれて。」

実はKeikoは「風の街へ」レコーディング当時、単発で顔も名前も出ない仕事のため、梶浦との出会いを「別世界の人」と感じ、Kalafinaで再合流した時も実感なく、あくまで仕事として一生懸命歌う、という感覚しか無かったという。(「Kalafina Record」 p056)
まさか10年以上経って、ビルボードで歌うことになるとは、音楽の予期せぬ縁とは不思議である。

K「2005年にこの曲を歌った当時は、まだこの曲の世界ときちんと向き合うことができなくて。
今回、譜面を引っ張り出して取り組んでいるうちに、『風の街へ』の景色がたくさん見えてきちゃって。
この歌、哀しい歌でしたっけ?とか、わからなくなって。
でも梶浦さんは、「毎回違っていいと思う」と言っていただいて。
自分はKalafinaでは低音の支えなので、いつもブレちゃいけないと思ってるんですが、今回は、自分が皆さんと共有したい『風の街へ』の景色を歌いたいな、と思って。
これからも、そんないろんな景色を見せてくれる、音楽の不思議な力を信じて、精進していきたいと感じました。
ありがとうございます。」

そして、ステージはいつもの3人の風景に…、と思ったら、Hikaruが感極まって泣いてしまい、「すみません〜、ティッシュないですか〜」とWakanaとKeikoがおろおろする状態に。
いつものバンド・ライブと異なり、汗をかくことはないだろうと、タオルが準備されていなかったらしい。
やがて客席からティッシュが差し入れられ、Hikaruは「ありがとうございます!こういうのHikaru2回目で、前も徳島で寒さと高ぶりで…。」

Hikaruだけではない。
WakanaもKeikoも、メンバーそれぞれが歌っている間、その独唱をひとりひとりの後ろ姿に重ね、なにがしかの想いを高めていた。
ファンクラブ・イベントならではのレアなソロ企画ははからずも、3人の歌い手としての歳月の重さと、それをどう受け止めるのか、それぞれの想いを浮き彫りにすることになった。

④「まどか☆マギカ」メドレー、そして…

1.今、ここでしかできない「ひかりふる」

「よっしゃ!」
気分を切り替えるように、Keikoが活を入れ、最後のパートが始まる。
Kalafinaが関わってきた映像作品世界を軸としたブロック。
魔法少女まどか☆マギカ」メドレーだ。(大阪では「劇場版 空の境界」メドレーだったらしい。)
気づけば、ここまでのセトリの多くがカップリング曲やアルバム曲だったが、ここから一気にメジャー曲の連続によるクライマックスだ。
まずは「Magia」。
櫻田の激しいピアノに、3人の音圧の強い歌唱が重なり、アコースティックとは思えない力強いダークな世界観が会場を覆う。

続いて、一転して希望に満ちた明るいハーモニーが重なっていく「未来」の前半部。
間を空けずに、可愛らしさの影に無邪気な怖さを秘めた「君の銀の庭」をフルで。
ソロ歌唱のコーナー後だけに、3人のハーモニーの美しさ、そして楽曲ごとに異なる世界を見せてくれる技術の高さが、さらに際立つ。

そして、「ひかりふる」。
暗めの照明の中、Wakanaの聖性をもつ響きを軸に、KeikoとHikaruがたおやかに曲の世界を広げていく。

♪私が何処にもいなくなっても
全てを照らす光の中
いつも君の側にいるから

と、舞台後方の背景幕が、音も無く左右へと開き始め、白い照明がステージを光で満たしていく。
現れた前面ガラスがミラーのように反射し、光がまばゆいばかりだ。

♪儚すぎて
消えていきそうな世界

ひかりふる」のMVの名場面、教会内で歌っている3人の後ろで扉が開き、真っ白な光で満たされるあのカットの再現だ!
やがて、照明がゆっくりと落ちていくと、ガラスの向こうには六本木の夜景。
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♪ひかりが 夢のような歌が
君を照らす…

今、ここでしかできない「ひかりふる」が終わった。

K「もうちょっときれいなはずなんだけどな〜。ま、Kalafinaだからいいか!」
おどけてみせるKeiko。

そして櫻田と4人で、「ありがとうございました〜!」と挨拶し、本編は終了した。

2.アンコール~積み重ねていく笑顔~

ring your bell”が流れ、その速いテンポに合わせた観客の拍手に乗って、4人が退場…。
と、拍手はそのままアンコールの流れへ。

曲終盤、再入場してくるや、最後のサビにあわせて

♪K(低音)・W(高音) ri〜ng your〜 beeeeeeeeeeell!

とおどけてハモる、KeikoとWakana。

K「アンコールないもーん!
今回、今野均さんに『何曲やるの?』と聞かれて、答えたら『やるねぇ〜www』って。
普通、ディナーショーって10曲程度らしいんだけど、私たち今回はMC少なくしてぎっしり歌おう、って決めて。
H「やりたい曲、詰め込んでね。」
K「だから、衣装見せに来たの〜www」
W「そうだよ、衣装見せに来ただけだよ!」

K「(Wakanaに)まわってぇ〜!」
くる〜りと回って、腰に手を当てドヤ顔する、Wakana。
一同「ひゅ〜〜〜!」

W・K「(Hikaruに)まわってぇ〜!」
ビシッと両手を広げ、薄手の生地の背中を見せつけるHikaru。
一同「ひゅ〜〜〜!」

K「……お疲れさまでした!」
スタスタと下手袖に帰りか、自分は拒否。
一斉に「ええええええええええええ!?」
W・H「(Keikoに)まわってぇ〜!」
K「やだよ、やんないよ〜!」
と言うや、“monochrome”でも魅せた、クルクル廻る動きを披露。
一同「おおおおおおおおおおお!」

一番照れ屋なのに、いや照れ屋だからこそ、一度期待を裏切っておいてからビシッと決めて、美味しいところを持って行くけこさま。
しかも、廻ったあげくにイヤモニが外れてしまい、それをWakanaが後ろから髪をかき上げ直すという、夫婦ムーブメントつきであった。

K「違う!漫談やりに来たんじゃないwww」
W「どうしよう〜」
観客「夏ソング!」
K「夏ソングはやりません!寒くなってきたから!」
観客「秋ソング!」
K「夏ソングもやりません!今後ライブでやるから!」
距離感の近さが生み出す、気さくなやりとりが心地よい。

やがて、台風接近の悪天候でもあるため、「ほっこりあったかソング」で決定。
W「櫻田さわわわわわわん!」というよくわからない呼び込みで、櫻田を招いてナイショ話で相談。

K「あったかソング、『真昼』です。」

最後も静かで誠実なカップリング曲。
陽射しのなかの幻想のようなラブソング。
原曲がピアノ単体なので驚きのアレンジも無く、心落ち着かせライブを締めくくるにはぴったりだ。

♪貴方の中を泳いでる 赤黒黄金の魚たち

夜景が浮かぶ窓ガラスには会場の照明も反射し、まるで東京の夜空を泳いでいるようだ。

♪遠い夏の物語のように 白い船の影の中で遊ぶ
水しぶき空へ投げて 笑うだけの

H「あの頃の声、戻ってこないかな−?とも思うんですけど。
でも9年、Kalafinaとしていろんな経験をして、皆さんと歌を作ってきたからこそ、今の“ARIA”が歌えると思っています。」

かつて、孤独だった3人が梶浦由記と出会い、Kalafinaで結ばれ、さまざまな経験のなかで学び合い、励まし合った9年。
決して昔には戻れないけど、この9年があるからこそ、今がある。

ただ、シンプルで深い音楽のみを通して、過去の原点を振り返り、積み重ねてきた「今」を見つめ直す。
時間と共に失われていくものの哀しみと、新たに築かれていくものの歓びを、300人の仲間に歌で語りかける。
そんな、プレミアム・ライブとなった。

歌い終わるや、K「これ、夏ソングだった…」(爆笑)
W「♪遠い夏の、とか歌ってるよね」
K「…すみません!秋に出直してきます!」

落ち着いたムードのビルボード東京で、しっとりとしめやかに終わると思えば、観客の明るい笑顔と笑い声での締めくくり。
「ま、Kalafinaだからいいか!」な素敵なエンディングだった。

ライブ直後のブログで、Keikoはこう語っている。
「”変わりたい”とか”変わらない”ではなく、この世に生まれたからには前進していきたいんです。何をもって”前進”かはその人個人にしか分からないけど。
その挑戦をさせて頂ける事に感謝して、音楽の旅をしていきますね(´ω`)」(Kalafinaオフィシャルブログ2017年9月21日「笑」

次は、初の「世界遺産Special LIVE」9.30日光と10.8&9興福寺。
慣れた“with Strings”とはいえ、春ツアーやクリスマスとは全く異なる世界を歌うはずだ。
いにしえの舞台で、そして10年目に向けて、いったいどんな「今」を魅せてくれるか、楽しみだ。

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