今日を絶対忘れない!~アリーナ・ライブ2016全公演~ 

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※このリポートは、Kalafina Arena LIVE 2016 神戸ワールド記念ホール(9/10・11)、日本武道館(9/17・18)4公演をまとめて記しております。
特に日付けや会場の指定が無い記述は、だいたい全公演共通、と受け取ってください。

序章 オープニング

伝説は「はじまりの地」から

神戸ワールド記念ホール。最大収容人数8000人。
2008年4月29日「Revo&梶浦由記 Presents Dream Port 2008」のオープニング・アクトで、WakanaとKeikoがKalafinaとしてはじめて立ったステージだ。
Hikaruはこの時、Kalafina参加が決定しているものの、ステージには立っていない。

いわば8年半ぶりの凱旋だが、前回はいわゆる「前座」、今回はワンマンライブ。
そして、前回は2人だったが、今回は3人で、この「はじまりのステージ」に立つ。

Wakana「私、基本的に人前で歌うと考えただけで足が竦んでいたんですよ。(中略・学生時代の合唱団で)自分だけがソロで歌うシーンに憧れたりもしましたけど、実際には苦手なままでした。だから、Revoさんと梶浦さんのイベントでのKalafinaのお披露目は全然覚えていないくらい緊張していましたし。でもここが矛盾していて、人前で歌いたいしそれを夢見ていたんです。だから今、歌うことを求めてくれる人がいて、その位置にいられることを幸せに思っています。」(Kalafina Arena LIVE 2016パンフレット)

初日、9月10日。神戸ワールド記念ホール。
会場に流れる梶浦サントラ、そして「まもなく開演します」のアナウンス。
すでに武道館2daysまで経験済みのKalafinaにとって、神戸ワールド記念ホールのような大きな会場であっても、いつもと変わらぬ開演前の光景だ。
ところが実際は、誰も見たことがないKalafinaのステージは、すでに始まっていた。

照明がゆっくりと、観客が気づかないほど時間をかけて落ちていき、最後は蛍が明滅するかのように客席を闇へ導く。

静寂と緊張のなか、やがて空っぽのステージ奥から、Keikoがまっすぐ、静かに前へ進み出た。
これまでKalafinaが装ってこなかった、長い袖に金色や赤をふんだんに使った、和の意匠。
Kalafinaライブで、歌姫がたったひとりでステージに立ったことじたい、初めてのことだ。

誰も見たことがない「アレルヤ」

舞台最前でKeikoはひと言も語らず、ほほえみながら会場を見渡す。
観客を焦らしに焦らしたのち、ゆっくりとマイクを口元に寄せると、アカペラで歌い始めた。

♪未来は君に 優しいだろうか
緑の雨が 君を濡らすまで♪

“アレルヤ”だ。

観客の呼吸のリズムに合わせるかのように、一音ずつ噛みしめ、歌っていく。

♪全てが静かに 燃える日まで♪

歌が消え入るのに合わせ、照明は急にフェードアウトし、暗闇へ。
何が起きるのか?
闇の中で目を凝らす観客の耳に、かすかに聞こえるKeikoの声。
「One,two,three…」

♪アレルヤ
祈りは何処にも 届かず消え失せて♪

圧倒的なハーモニー。
再び照らされたステージには、KeikoとWakanaとHikaru。
3人だけのステージに3人だけの歌声、そして櫻田泰啓のピアノの音色が合流する。

これは、4月29日、国内での最後のワンマン
“with Strings”Spring Premium LIVE 2016のNHKホール公演の終幕の再現だ。
前回からのつながりを大事にするとともに、アリーナライブという大舞台のオープニングに独唱→3声という声のカタルシスを持ってくる、Kalafinaならではの自信に満ちた選曲と演出だ。

2曲目への急展開!「believe」

荘厳な“アレルヤ”が終わるや、一転して軽快でアップテンポなイントロが流れ始める。

“believe”
聞き慣れたメロディーに安心し、アリーナの観客は「待ってました!」と立ち上がる。
ところがその瞬間、

ステージ後方の幕が落ちると同時に…、
爆音!ステージ天井から火花!

驚く観客の前で幕が落ちると、壇上に現れるバンドメンバーたち。

“アレルヤ”の「静」の余韻を、Kalafinaライブ初のパイロテクニクスで強引に切り離し、“アレルヤ”とは180度異なるが、こちらもKalafinaの定番であるアップテンポ曲に、一気に雪崩れ込む。
静寂から爆発へ。
緊張から解放へ。
Kalafinaの両極端な魅力を力技でつないでみせた。

ライブ数日前の取材で、「Kalafinaが秘めている凄さを引き出す」と語っていた南流石の演出がここにある。

緩やかに消える客電、ひとりでアカペラ、和の意匠、照明での翻弄、爆発…。
Kalafinaはじまりの地で、誰も見たことのない新しいKalafinaが、始まった。

第2章 Hikaru“今のKalafinaを届けよう”

いざないのMC1から「ヒストリア」の世界へ

“believe”が終わるや、櫻田のピアノがしっとりとした、まるで弾き語りのようなソロを始めた。
そこにKeikoが、これもゆっくり、しっとりと語り始める。

K「ようこそ、Kalafinaワールドへ。(3人、うやうやしくお辞儀)
Kalafnaワールドとは、皆さんの心の中の旅を意味します。
今夜、さまざまな曲を皆さんにお届けする中で、
みなさんご自身が心の中に問いかけたりできますように。
そんな特別な夜になることを願ってます。」

艶やかさと、観客ひとりひとりに語りかけようという姿勢をより強く感じる語り口。
これは4月にKalafinaがゲスト参加した谷村新司リサイタルでの、谷村の語り口だ。

あの超ベテランならではの落ち着きといざないのMCに、Keikoは挑戦している。

こんなひとつひとつの工夫からも、
このアリーナライブが彼女たちの“音楽の旅”を丁寧につなげ、新たな挑戦を披露する場であることがうかがえる。

そしてここからは、Kalafinaの幅を広げる、和の意匠を活かした2曲+1。
3. “storia”
4. “星の謡”(神戸、武道館、各初日)、“花束”(各2日目)
5. “neverending” (各初日)、 “君の銀の庭”(各2日目)

“storia”では、まるで「歴史秘話ヒストリア」のオープニングを再現するかのような、和柄模様や花火、桜の花片状の映像が、ステージ上を埋め尽くす。

そして“星の謡”では3人が、戦乱の姫のごとく華やかに舞い踊り、天井からのカメラ(Kalafina初?)が、美しく三つ巴のように廻る3人を映し出す。
厳しい運命を司るようなKeiko、悲劇に翻弄されるようなWakana、そして斬り裂くようなHikaru。
大モニターには、シャープなモノクロ映像で3人のアップが映し出され、そこに筆で叩きつけたような効果が撥ねる!
カメラを睨み付けるようにアップになった、Hikaruの陰影のある表情!!!
モニターがカラーに転じ、Keikoの伸ばした指先が大写しになるや、情熱的な赤いネイル!!!
カッコイイイイ!!!
これまでのライブでは今ひとつ影が薄かった“星の謡”は、今回のライブで一番大化けした曲なのではないだろうか。

名プレイヤーたちにKalafinaが感じたこと

そしてこのブロックでは、Kalafinaに刺激を与えるゲストたちのスーパープレイが爆発した!

“storia”では、神戸2日間と武道館初日はフルートに赤木りえ。そして武道館2日目は“storia”のレコーディングにも参加したEliko(福井恵利子)!赤木の「魂のうねり」ライブ・バージョンと、Elikoの「涼やかな透明感」オリジナル・バージョン。個性の全く違う2つの“storia”が、これまでにない和の世界の中で花開く。

“星の謡”では、赤木りえのフルートが、まるで荒野を疾駆する騎馬武者のように激しく響き渡る。

“花束”と“君の銀の庭”で、佐藤芳明のアコーデオンが撥ね、むせび泣き、暖かい陽射しのような多彩な音色を奏でる。
“neverending”では、中島オバヲの哀愁を帯びたパーカッションに今野ストリングスが重なると、これまで幾度となく聞いてきた“neverending”とは大きく印象が違って聞こえ、3人の歌声もこれに呼応するかのように、愁いと丸みを帯びたように感じた。
スーパープレーヤーたちとの無数の出会いが、彼女たちを変えてきた。

Keiko「私たちがたまにできることを、TPOに合わせて思いのままにされている方がいて、“いつかそこに”と思ったりするんですよ。先日、出演させていただいたイベントに出られていた葉加瀬太郎さんのバイオリンを聴いて、それを感じました(笑)」「その前日は、『めざクラ』に出演させてもらって。そこに世界的に有名なバイオリニストのヴァスコ(・ヴァッシレフ)さんと高嶋ちさ子さんがデュオをしたんですね。2人のソリストが音と音でぶつかったり交わったり遊んだり、いろんなことをするんですよ。そこで強烈な刺激をもらって、“私、これをWakanaとHikaruとやりたい”と思いましたし」(Kalafina Arena LIVE 2016パンフレット)

やがて、Kalafinaの衣装は和装を脱ぎ捨て、白のドレスに。
そして、ステージに真っ白な、直方体を不規則に組み合わせたお立ち台がせり上がると、ここからは、「いつものKalafina」の現在形をしっかりと見せる2曲。

.“胸の行方”では、3人がお立ち台で三角形を為すような立体的な配置で、美しいハーモニーを響かせる。
続く“ring your bell”では、アコースティック“(in the silence)”バージョンから始まり、やがて力強い無印“ring your bell”へ。
クライマックスに向け、3人のハーモニーが疾走感と共に絡み合い、それでも3人の声が融け合うのではなくひとりひとりの声が屹立しながら、ラストはWakanaのハイトーンがこれでもかと鳴り響く。

ソロで歌うシーンに憧れながらも実際は足が竦み、神戸ワールド記念ホールでのKalafina初ステージも覚えていない、と語ったWakanaが、みごとなパワーボーカルで数千人の観客を虜にした。
もちろんWakanaだけではなく、KeikoもHikaruも、Kalafina8年半の無数の蓄積が、このひとつひとつの瞬間につながっている。

このことは、今回のライブのタイトルが、アルバムやシングルの名を冠していないことにも関係している。

今のKalafinaを届けるためのトライ&エラー

Hikaru「ツアータイトルにシングルだったりアルバムを掲げていなくても、実は“歌うこと”に関してはあまり変わらなくて。(中略)何を主軸にするのか3人で話したんですけど、その時“今のKalafinaを届けよう”っていう結論になったんです。これまでやってきたことを一つひとつ形にして、今の全力を届けるライヴにしようって」(Kalafina Arena LIVE 2016パンフレット)

今のKalafinaを届ける。
アリーナツアーという大きな挑戦に対して気負いや力みのない、自然体の言葉。
それは同時に、3人が今のKalafinaに絶対的な自信があることを示唆している。
初ステージから8年半、Kalafinaはここまできた。

第3章 Keiko“良くなっても悪くなっても、プラスはあると信じて”

南流石とのトライ&エラーの日々

Keiko「南流石先生が入ってくださってから毎回こんな感じかなぁ。3人で歌ってきた曲の印象とか流れとか、二人の歌いかたとかは把握してるつもりなので。それを踏まえてこれは可能、これは不可能、でもやってみます! っていうトライの仕方をしています。そうやってディスカッションしていくのは昨年の武道館のときはなかなか流石さんと出来なかったので、今回は楽しいですね。」「 私も流石さんも本気でぶつかった時に、何かが見えるっていうことを信じてるんですよ。だから『出来ません』とか『やらない』っていう選択肢は無しにしよう、っていうのは決まり事にしてます。」Kalafina×SPICE 「Road to Arena LIVE」パーソナルインタビュー Keiko編

W「改めまして、Wakanaでーす!よろしくおねがいしまーす!」
3人揃ってのMCは、先ほどのKeikoのリサイタルスタイルとは打って変わって、Wakanaの元気でストレートな挨拶から始まり、そして趣味の話や“ring your bell”への想いなどの、3人娘の人柄が見える“いつものKalafina”トークへとなだれ込む。
ただし、会場によって挨拶の順番やトークの進行役を入れ替えるなど、今回彼女たちは、観客が気づかないような細かいところから、さまざまな試みを積み上げている。

前回の武道館では演出に違和感を覚える観客も多く、南流石の感性とKalafinaのミスマッチングを唱える声も少なくなかった。
しかし今回は、うまくいっても、失敗しても、それはKalafinaと南流石で作り上げた世界だ。
言い訳のできない、本気のトライ・アンド・エラーが続く。

8曲目“夏の朝”は、色彩の世界との融合。水色や緑の油絵の具を厚塗りしたかのような映像が、背景モニターからあふれんばかりに投影され、まるで森の中の湖畔を描いた絵画のなかで歌っているようだ。

9曲目“追憶”は、まるで朗読劇。3人が思い思いに歩き、特にセンターで歌うKeikoの周りを、WakanaとHikaruが廻りながら歌ったのが印象的だ。

10曲目“red moon”は、歴史スペクタクル。センターで歌うWakanaにプロジェクションマッピングで女神像のような装いが為され、背景の建築物CGには巨大な岩の奔流が飛んできて、宮殿が形成されていく。
宮殿はやがて赤いツタに覆われ、血管網のような毒々しい姿へと変貌。まるで王国の興亡を凝縮したかのようなビジュアルが、幻想的な音楽と絡み合う。

11曲目“ Magia[quattro]”。今野ストリングスのしびれるような音色のなか、左右のウィングに立つKeikoとWakana、そして舞台の上をさまようHikaruによって、演劇空間が現出する。
不安におびえ、希望を求めて叫ぶ少女のHikaru。
運命の女神か、絶望の悪魔のように翻弄するWakanaとKeiko。
Hikaruにささやき、腕を首にからめてとりこもうとするKeiko。(このKeikoが誘惑の手を伸ばし、Hikaruが身を委ねる姿がエロチック。)
その腕をふりほどくと、決意したかのように壇上に登り、力の限り願いを歌い上げる。
Hikaruの表現力が遺憾なく発揮された、今ライブ屈指の名場面だ。

12曲目、このブロックの締めは“to the beginning”。
ここまでケレンミたっぷりな演出で「音楽の旅」「音のエンターテインメント」を表現し続け、観客を興奮と驚きに引き込んでおいて、最後は定番のKalafinaロックナンバーをストレートに出して、安心させてブロックに一区切りをつけた。

実験的な要素も多々含まれた、大胆な演出の数々。
人によって感想は異なるであろうが、私は、Keikoのこの言葉を信じるだけだ。

Keiko「Kalafinaは今回のアリーナ、トライすることを心がけました。良くなっても悪くなっても、何かプラスはあると信じて、トライをしようと決めています。そして実際やってみて、まだまだ音楽で届けられる表現はあると思いました。だからこれからも、さまざまなトライをして、度肝を抜くステージにしていきたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします!」(神戸2日目)

ttbが終わり観客にお礼を述べるや、Keikoの合図でバンドメンバー紹介。
HikaruとWakanaがその流れのまま、矢継ぎ早にメンバーの名を叫んでいく。

このMCの間でふと気づいたが、過去のライブではMCの際に、前ブロックで歌った曲名を紹介していたはずだが、今回はこの“段取りとしての曲紹介”がない。
これもKalafinaでは初めてだ。

一瞬たりともお客様を素に戻したくない

Keiko「お客様が心地よい空間作りをしたいんです。流石さんとも話してたんですけれども、一瞬たりともお客様を素の世界に戻したくないんですね。チケット切りました、会場に入ったその瞬間から『始まる!』っていうあの感覚を帰るまで、皆さんに楽しんでいただきたいんです。その空気感を作る、それを実現したいんです。」「お客様が素の世界に戻らないということは、「集中を1回も切らせない」っていうことでもあるので、どんなにカジュアルな曲でも、その曲を聞いた時に、お客様にとって一番心地良い音楽を提供するのが、世界から覚めさせないことだと思っています。」
Kalafina×SPICE 「Road to Arena LIVE」パーソナルインタビュー Keiko編

セットリストを語らない、ということは、「この歌なんていうんだろう?」と好意を持ったお客さんの要望を「切り捨てる」というリスクを抱える。
それでも“段取り”としてのセットリスト紹介を廃す方針を選んだ。
これだけでもチームKalafinaの大きな覚悟が見て取れる。

そしてその「集中を1回も切らせたくない」という言葉通り、3日目まではKeikoが、そして武道館最終日は3人が客席を煽り、第3のブロックへと突入していく。

W「Wakana側、1階ー!(ザワザワ・K「Wakana側いらない」)」W「あ、そうかw」)いっかーい!!」(大歓声!)
H「…(溜めて)2かあああああい!」(大大歓声!)
K「アリーナ!?」(大大大歓声!)
K「武道館!?(書き切れないくらいの大歓声!)
…“blaze!”」

第4章 Wakana“お客様にもっと近づけるライブに”

磨き抜かれたクライマックス曲たち

3ブロック目のクライマックスは、5曲連続。
13.blaze
14.destination unknown
15.identify
16.signal
17.音楽

14,16,17は、昨年の日本武道館“THE BEST 2015 Blue Day”での連続した並びだった。
15,16,17は、“far on the water”ツアー FINALのクライマックスの曲順。
しかもアップテンポ曲を5連続でやる、というのは2013年の“Consolation”ツアーのライブハウスver.とFinal)や、毎年1/23のO-EAST“Anniversary LIVE”ぐらいでしかあまり印象にない。
つまり、「この1年半磨きに磨いた最高峰の必勝パターンで、巨大アリーナをライブハウスにします!」宣言だ。

14曲目“destination unknown”
Hikaruが緩急・強弱の激しいメインを務め、それをWakana、Keikoが絡んでいく。
最後はWakanaとKeikoに密着して挟まれるような立ち位置でHikaruの熱唱ロングトーン!

♪何処までもー流されて、行くーのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!♪

歌い終わると同時に、全身から力が抜けて「やりきった!」感で微笑むHikaru。
それを左右で支えるWakanaとKeiko。
武道館初日では、HikaruがKeikoに身を預けるようにもたれかかると、Keikoが抱擁で返したり、2日目は2人がにっこり笑っておでこをコツン、と当てたり。
2人の姉が妹の頑張りを見守っているかのような光景に、思わずウルッと来そうになった。

まさか「音楽」でのサプライズ!

そして“音楽”。
定番中の定番、Kalafinaライブの顔とも言える曲に、今回は中島オバヲの歯切れの良いパーカッションが加わり、ビート感がいっそう高まる。
最大のクライマックスは曲の中盤、間奏部分で各ミュージシャンが見せ場を作る場面の前に、なんと観客にも一緒に歌うように促したのだ。
例の、指を突き立てる振り付けで盛り上がるパートだ。

Keiko「みんなー歌ってみてー!」
観客「魂が果てるまで一条の光を信じて!」
繰り返すたびにKeikoが、「じょしー!」「だーんし!」「アリーナ!」「ぜーんいん!」と合いの手をいれる。

まさかKalafinaで、しかも“音楽”で、クライマックスで観客と一体になる演出をぶつけてくるとは!

Wakana「昨年、日本武道館公演を初めて行ったあと、出来ることまだまだあるんだ!って思って挑んだのが『Kalafina LIVE TOUR 2015~2016 “far on the water”』ツアーでした。それも超えて今回のアリーナライブになるので、新しい物を見せるのはもちろん、お客様にもっと近づけるライブにしたいと思っています。」「よく言いますよね、『遠い存在になっちゃった』とか。そういうことではなく、最初からライブを見て、最後になったら最初よりもお客様との距離が近くなったって思いたいです。」Kalafina×SPICE 「Road to Arena LIVE」パーソナルインタビュー Wakana編

ハイテンションで約30分ぶっ通し!
『遠い存在になっちゃった』どころか、Kalafinaはアリーナ会場をライブハウスにしてしまった。

4日間、走り続けた末の日本武道館2日目では、ここでMCをするはずのKeikoが声を詰まらせ、Wakanaと互いに涙ぐんだ顔?を指さしあっておどけたり、Hikaruが高い天井を見上げ下唇を噛み、涙をこらえたりする瞬間も見受けられた。

(※なお最終日は、観客合唱時にKeikoが順番を混乱して、演奏が乱れる事態が勃発。その後のMCで、「またリベンジしに来る!武道館いいですか!?」と叫び、観客が「3回目の武道館宣言」として盛り上がったりもしているwww )

第5章 Keiko“Kalafinaは、3人でひとつだけど、それぞれでもあります”

それぞれの会場で語られたこと

そして最後の曲前のKeikoのMC。

「初めてのアリーナ・ライブ・ツアー、どんな風に音楽を届けようかと悩みました。Wakanaは『いつもより近づけるライブにしたい』と言ってくれました。Hikaruは『会話するような歌声を届けたい』と言ってくれました。私は音にこだわった、心地の良いハーモニーを届けようと思いました。Kalafinaは、3人でひとつだけど、それぞれでもあります。
でもやってみて、お客様がいて初めて完成できるものなんだな、と思いました。」(武道館初日)
「今までKalafinaがやってきたライブハウス、ホールツアー、クラッシックホール、アリーナ、そういう点を全部つなげられないかと思ったんです。みんなで悩んで作ってきました。それを1曲1曲、みなさんが完成させてくれました!ありがとうございました!」(武道館2日目)

夢の中へはひとりで行くよ…“into the world”

そして本編最後の曲“into the world”。
それぞれの心の中へ、自分を問いかける旅の歌。

♪何も見えない場所まで行く 新しい種を探して
初めての水を大地に落とすための旅路

夢の中へはひとりで行くよ 誰もそばには立てないね
星空にさしのべた手の平に 小さな光をともしている♪

ここで南流石は、3人を一歩も動かさず、背後のモニターに3人が歌う表情をひたすらアップで映し続ける選択をした。
それまでアクティブに動的な演出を重ねてきたのは、一転、静のなかの動、表情という動を最大限まで際立たせる目的だったのではないか、と感じるほどのサプライズだ。

まっすぐ、真摯に前を見つめるWakana。
まるで女神のように微笑むKeiko。
喜びと切なさが交錯するようなHikaru。
歌声同様、3人それぞれの全く異なる表現。
「Kalafinaは、3人でひとつだけど、それぞれでもあります。」
この言葉が、目に見える形で現出した。

Keiko「Kalafinaとしての活動を始めた頃に梶浦さんが“ハモじゃないの。闘うように。ソロ対ソロなんだよ”って」「Kalafinaも、3人がソリストなわけですよ。ソリストがハーモニーをやって、またソリストという、いち表現者に戻るというところもこの先突き詰めたいんです。ハーモニーをクリアしないと次に進めない、演出もできないっていう場所の先にあるものとして、今、両方できる強みというものが見え始めていて、それを3人で手にしたいなって。」(Kalafina Arena LIVE 2016パンフレット)

ハーモニーから成る梶浦由記の音楽世界を歌い上げるために、長い時間をかけて彼女たちは研鑽を積んできた。
その上で今、ひとりひとりが自分自身に問いかけ、ソリストとしての表現を模索し、そして新たなKalafinaを築こうとしている。
その思いが、この曲を歌う歌声にも満ちている。

♪心のなかへ降りていく旅 だからどこにも逃げないよ
あきらめたくて泣いてる時も 誰もそばには立てないね
暗闇で指に触れた朽ち木に 小さな光をともしている

毎朝君の旅は始まる 世界の中へ 遠くへ
空を仰いで、胸の深くへ
into the world♪

第6章 Keiko“3人で!戻ること、立てること…。”

笑顔と感動のアンコールへ

万雷の拍手の中、本編は終了。
そして、アンコール。

ステージにバンドメンバーが現れるや、是永とJr.の煽りで、中島オバヲと佐藤強一の熱い競演!
そのリズムに乗って、会場後方(武道館では側面)から3人が登場し、客席にしつらえられたお立ち台へ!

♪in your eyes!♪

本編で出し尽くしたかのようなKalafinaワールドだが、まだこの世界が残っていた。
“テトテトメトメ”に並ぶ、コケティッシュで可愛い恋のゲーム。

改めてステージに駆け上がった3人が大きく手を振ると、観客もそれに応え、巨大な会場全体に大きな波が広がった。

3人ともラフな青い衣装で、見つめ合ったり、背中をぶつけたり、つつき合ったり。
遊び心満載で、アンコールの喜びを全身で返す。

続く“One Light”では一転してカッコイイKalafina。
前回の武道館以降、もっともステージングが洗練された盛り上がり曲で、ビシッと締めて見せた。

そして毎度おなじみ、Hikaruのグッズコーナーは、
トートバッグやパンフレット、3人のプロデュースグッズを、いつもの不思議な微笑ましいトークで紹介。

Keikoが続いて、11/6に冬をイメージしたアコースティックアルバムWinter Acoustic “Kalafina with Strings” を発売することと、12月の“with Strings”ツアーを告知。

ライブはいよいよ、ラストへと向かう。

Keiko「この2日間、私たちと一緒に、音楽の旅をしてくださる方がこんなに大勢いることに、心が温かくなりました。改めて3人で「歌い続けよう!」と誓いました。
神戸ワールド記念ホール…3人で!戻ること、立てること…。皆さんのおかげです!」(神戸2日目)

各会場での最後の締めくくりはすべて異なる。
(神戸初日)“光の旋律”“far on the water”
(神戸2日目)“夢の大地”“sprinter”
(武道館初日)“光の旋律”“symphonia”
(武道館2日目)“ひかりふる”“未来”

いずれも、これまでのさまざまなライブで最後を締めくくった曲たち。
まさに、「今までKalafinaがやってきた点を全部つなげたい」と願ったライブに、ふさわしいエンディングだ。

最後もまた「見たことのないKalafina」

そしてバンドメンバーとカーテンコール後、“ring your bell”をBGMに、3人の背後のお立ち台に、ひとつずつメッセージを書き込むという新趣向。

(神戸初日)Wakana“音楽が、私たちを、繋いでくれる!!”
(神戸2日目)Keiko“神戸に旗を!”
(武道館初日)Hikaru「真っ直ぐ、あなたへ」
(武道館2日目)3人で1文字ずつ、「あ・り・が・と・う」

最後の「あ・り・が・と・う」は、Kalafinaにハケを持たせるという、過去のイメージからはありえない演出。
しゃがんで書いていたKeikoが尻餅をついて大笑いしたり、3人がステージ最前までやってきて座り込んで文字の全体像を眺めたり、そのまま寝転んで天井を見上げたり。
ライブツアーの締めくくりの感動と、3人の気さくなキャラクターが結びついている。

そして3人がステージを去ったあとで、小さくて読めなかった文字をモニターで大映しし、観客がメッセージの内容を理解させてライブを締めるという、感動的な演出。
最後の瞬間まで、南流石はプロの仕事で締めてくれた。

しかし、武道館最終日はそれでは終わらなかった。

最終章 ダブルアンコール!!~今、僕等は時を蹴り走る~”

最終日…君に会いたい、君が愛しい

“ring your bell”のリズムに拍手をし続ける観客たち。

いつまでも鳴り止まない拍手に、3人が再び現れた!
Wakana「うそでしょー!?」

まさかのダブルアンコールに、観客は「もう一回!!!」と手拍子で大喝采だ。

Keiko「初めて立った時の、武道館ラストは、“sprinter”で終わりました。みんな“sprinter”でいい?」

ピアノの櫻田泰啓を呼び込んで、始まったのは“sprinter”アコースティックバージョン。
前回の武道館のラストからつなげつつ、次のアコースティックライブへとつなげていく。
「点を全部つなげていきたい」という思いが、ここにも現れている。

♪風に向かい破れた旗を振り
君のいない道を 僕は僕の為
行くんだ…♪

Hikaruの独唱がフェイクとなって、魂からの叫びのように響き渡る。

「Kalafinaは、3人でひとつだけど、それぞれでもあります。」
3人がそれぞれ個性を活かして自由に歌いながら、それでいてひとつのKalafinaとしてハーモニーを響かせる。
Kalafinaは、次のステージに向けてまだまだ変わり続ける。

♪君に会いたい
君が恋しい
君に会いたい
君が愛しい♪

櫻田がふいに演奏を止めるや、観客を促すKeiko。
まさかの武道館全員の合唱だ。

♪君に会いたい
君が恋しい
君に会いたい
君が愛しい

君に会いたい
君が恋しい
君に会いたい
君が愛しい♪

これを受けて、Hikaruがさらにシャウトする。
♪生きて、いるんだ♪

Hikaru「直接お客さんの目を見て、反応を感じて、やりとりをしてきた中で今のKalafinaのライヴがあるんですね。だからライヴに参加してくれた皆さんと一緒に創っている道の途中でもあって。今日できるライヴに全力をかける。それが“今のKalafina”を届けるライヴだと思っています。」(Kalafina Arena LIVE 2016パンフレット)

ライブ活動当初、WakanaとHikaruは観客と目が合わせられず、梶浦からこっぴどく怒られ、こう指導されている。
梶浦「『sprinter』という曲に、“君に会いたい”という歌詞の部分があるんですが、『せっかくおいしい歌詞なんだから、必ずお客様を誰かひとり指差して』(中略)『指を指された方が必ずKalafinaを好きになってくれるように、そういうつもりでやって』って(笑)。『1曲の間に10回あるなら、10人のファンを作るまでライブを終えないで』とお願いしました(笑)」
『Kalafina Record』2011年)

“sprinter”だけではない。
ライブ活動開始直後、キャパが300人程度のライブハウスの時代から、3人はすべてのライブ、すべての曲で、「お客さんとともにライブを作っていく」という意識で歌い続けてきた。
そのたゆまざる積み重ねが今、日本武道館の1万人近い歌声となって3人を包む。

(観客)♪此所に、いるんだ…♪
Keikoが、マイクなしで観客席に叫んだ。
「ありがとう!」

最後に、3人の造語ハーモニーがゆっくり、深く会場に響いた。
これまで数々の感動を生み出してきた“sprinter”だが、その歴史に新たな伝説が書き加えられた。

歌い終わり「ありがとう!」の歓声が響く中、BGMに“五月雨が過ぎた頃に”がかかる。
曲に合わせて手を繋ぐ3人。

Keikoが叫ぶ。「今日を絶対忘れなーい!」
3人がステージを去り、次へとつながるライブは、ひと区切りとなった。

Kalafinaは、止まらない

Kalafina9年目にして最大の挑戦と言える、巨大会場ツア-4公演。
それは、これまでの8年半のKalafinaであり、現在のKalafinaであり、そのうえに自然に現れた“初めて見る”Kalafinaでもあった。

「今日を絶対忘れない!」
すでに過去となった今回の4公演を大切に記憶し、4つの点をさらに未来につなげ、Kalafinaはまだまだ走り続ける。

♪光の早さで消えて行く昨日へ手を振って
何処までも明るい砂漠を
今、僕等は時を蹴り走る♪

Keiko「ライヴをやり続けることって、止まっていたらできない、それは思います。そういう意味でもKalafinaはデビューしてから止まったことがないんです。」(Kalafina Arena LIVE 2016パンフレット)


 

(参考・Kalafinaブログでのライブ報告)
『ありがとう神戸』(09/12 Keiko)
『3人で立つこと』(09/15 Hikaru)
『Arena』(09/18 Keiko)
『同じ場所なのに違う景色でした』(09/19 Hikaru)

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コメント

  1. とくなす より:

    楽しく読ませていただきました。心の中にライブの感動が蘇ってきて、最終日の”sprinter”が今にも聞こえてきそうです。歌姫3人の言動の背景についても「なるほど!」と納得させられました。
    すばらしいリポートありがとうございました。

    1. wakakekohika より:

      とくなすさま お読みいただき&ご感想をいただき、ありがとうございます!こうしてリアクションをいただけると、本当に励みになります。今後とも、よろしくお願いします。

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