きみのみらいへ “Kalafina with Strings” Spring Premium LIVE 2016~4/17札幌・24仙台・29東京~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

聖夜に輝く赤と緑のクリスマスツリーではなく、陽射しのテラスのような空色と白を基調とする舞台に、椅子とソファー。
厳かな弦の調律の音ではなく、爽やかな小鳥のさえずり。
そして、ミュージシャンがスタンバイした後に豪奢なドレスで、ではなく、ミュージシャンとともにさりげなく、軽やかなドレスにジャケットを羽織り、手を振りながらKalafinaの3人は登場。
最初の曲は、賛美歌でもクリスマスソングでもなく、“Eden”。

ここまでで早くも、今までとは違うKalafina感満載だ。

Hikaru「季節が春なので、ワクワクしながら1曲目を始められたらいいですね。クリスマスライブの厳かな雰囲気とはまた違った、春の暖かさや爽やかな風を感じていただけるよう、1曲目で良いスタートを切れたらなと思っています。」(ツアーパンフレットより)

これまでの、年に一度のクリスマス・プレミアムだった“with Strings”とは趣を変えて、徹底して“Spring Premium”=春をイメージした演出。
初日、札幌市教育文化会館でのこの意表を突く幕開けは、このツアーがわずか3日間ながら、今までとは違う新しいKalafinaを生み出す試みとなることを予感させた。

 

これぞ“Spring Premium”!青空とそよ風のKalafina

Kalafina初の今回の企画はなぜ生まれたの?

そもそも、“with Strings”という名称のコンサートが始まったのは、3年4か月前の2012年12月19・21・22の東京のかつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール(1318席)&大阪・サンケイホールブリーゼ(キャパ912席)から。
“X’mas Premium”と銘打ち、その後は、東京・Bunkamuraオーチャードホール(2150席)や大阪ザ・シンフォニーホール(1704席)など、クラッシック・コンサートやオペラが上演される会場に進出し、Kalafinaとピアノ&弦楽四重奏で奏でられる、クリスマスならではのコンパクトで濃密なオトナのコンサート、というブランド感を年々高めていった。

その“with Strings”を、札幌、仙台では初のKalafinaのホールライブとして1000人規模の会場で。そして東京では、これまで何度もバンドライブを行ってきたNHKホール、座席は3600席という大規模でおこなうということは、もとよりクリスマスバージョンとは違うステージを提供することを意味している。
“with Strings”とはいえ、これまでの“X’mas Premium”と普段のバンドライブとの中間を開拓する、というイメージだろうか。
Kalafinaのファンが高齢者層にも広がり、またKalafinaの3人も年齢を重ねていく中でのこうした試みは、アーティストKalafinaの成長に効果的なのだろうと思う。

“Eden”、そして「屋根の向こうに」と続くオープニングのブロックは、まさに青空や新緑を感じさせる、のびのびとしたスタートを切る曲としてふさわしい。
初日の札幌では、まだ“X’mas Premium”のしずしずと納まった感のある印象が強かったが、仙台、東京と日を追うごとに、のびやかな印象になっていったのは確かだ。

最初のMC。
Wakana「今日は、みなさんと春を感じながらのステージにしたいと思います。Wakanaです。よろしくお願いします。」
Keiko「会場に足を運んでくださったおひとり、おひとりと、この時間を作っていきたいと思います。」
Hikaru「会場の一番、前の方から、いちば~ん後ろの方まで、みなさん全員と今日だけの響きを感じあえたらと思います。」
Keiko「今夜はピアノとストリングス、そして声のハーモニーをお楽しみください。」

元気いっぱいの「Wakanaでーす!」よりもおとなしく、でも気さくに観客に語りかける挨拶は、まさにバンドライブと“X’mas Premium”の中間形。
観客からも、“X’mas Premium”では起きない歓声がさかんに飛ぶ。(特に、仙台は「待ちかねたよ!」と言わんばかりの勢いだった。)

そして、曲は次のブロックへ。
「木苺の茂みに」「春は黄金の夢の中」「neverending」「むすんでひらく」の4曲。
このなかで「木苺の茂みに」「春は黄金の夢の中」は、“with Strings”では初披露。
タイトル的にもなかなかクリスマス気分にはハマらないものが、まさに「春」ならではのお披露目、という感じ。
オープニングの明るさにやや陰が射すこの2曲のあとは、ストリングスがWakanaと相まって哀調を際立たせる「neverending」。

そしてピアノの櫻田泰啓のカウントで勢いよく飛び出すような「むすんでひらく」では、Hikaruの透明感ある歌声が響き、シンプルな編成でありながらさまざまな表情を見せつける。

まさに「春のKalafina」演出は?

いつの間にか、3人はジャケットを脱いで、さらに春めいたノースリーブ衣装に。
後ろを向けば、HikaruはV字に切れ込んだ衣装からのぞく背中に、Keikoは大胆すぎる背中が丸空き衣装!
動きと言えば、歩きながら時にソファーの背に手をかけ、肘かけにもたれるなど、まるで陽射しのテラス風景で撮影したPVを目に浮かばせるかのよう。
前回の“far on the water ツアーが、フロント・スクリーンへの投影で度肝を抜いたり、ツアー・モチーフとなっている“旗”に風を吹かせるなど、大がかりな仕掛けで新たなKalafinaを提示したのに対し、今回は素材の魅力を生かしたナチュラル演出だ。

これを手がけているのは振り付け師の南流石氏。
日本武道館2days“The RED&BLUE”から始まった南流石氏の振り付けは、一部の曲をめぐりファンの間で賛否両論あがっているが、彼女のチームKalafinaでの肩書きはあくまで“Choreographer(振付師)&Director(演出家)”。
fotwツアーのほとんどの回や先日の谷村新司リサイタルにまで、客席からKalafinaを見守りメモを取っている姿が、ファンに目撃されている。
そんな熱心な彼女の試みが、このシンプルだけど暖かい、Kalafina“Spring Premium”演出なのだ。
気が早いが、秋のアリーナツアーはどんなKalafinaを魅せてくれるか楽しみだ。

挑戦?Wakanaひとりトーク劇場

続いて2度目のMC。珍しくWakanaひとり語りで次の曲紹介まで。

(札幌)「①映像作品の曲を歌うことが多いんですけど、登場人物の心情に寄り添っていることが多いんですね。②だから人の気持ちを歌ってることが多いんです……あの…私、何言ったんだろう?」(爆笑)

(Keikoのフォロー受けて)W「③みなさん、曲を聴いてて、歌詞を聞いて、自分に重ねたくなりませんか?④でも私、そういう気持ちって、恥ずかしくて人に言えないんですよ。照れてしまって。みなさんの中にも、こういう風景を思い出すな、とか、大好きな人を思ったりとかあると思います。そういう気持ちを自分の大切な宝物にしたいと思っています。そんな、人の優しい気持ちを込めて、歌いたいと思います。」→「灯影」へ

(仙台)「(①は同じ。)②みなさんは曲を聴く時、歌詞が耳に入ってきますか?メロディーが入ってきますか?(抽象的な質問に、観客困惑で無反応)…(困り眉で)うーん、どっちだろうねー?」(爆笑)「わたしはねー!曲からなんですよ。これいい曲、となってから、歌詞が入ってきて、こんないいこと歌ってる!どうしよう、泣いちゃう!…そんな流れです…。でもそういう気持ちってなぜそうなるのかは、カラオケで歌ってても、たとえ泣きながら歌ってても、それは人には言えない、って。…何言いたかったんだろう?」(爆笑)以下、④の流れ

(東京)「さて、みなさんは音楽を聴く時に、まずメロディーから聴きたくなりますか?歌詞から聞きたくなりますか?…(前日同様、無反応)…今、みなさんの心の中に歌詞とか曲とかプラカードが立ってますね…、でも私には分かりません。(笑)なので、私の話で良いですか?(以下、④の流れを厚めに)次の曲が、みなさんの胸に響きますように。」→「胸の行方」へ

こうしてみると、失敗を重ねながらも3日間、ちょっとずつ構成や言い方を変えていることがわかる。これまではなんとなく3人トークになだれ込むパターンが多かったMCを、ひとりで観客との対話で通す、というこの新機軸も、新たな試みなのだろう。がんばれWakana!

 

「ひかりふる」と“sprinter” 
WakanaとHikaruそれぞれのアコースティック

続いてのブロックは、「灯影」(札幌・仙台)、「胸の行方」(東京)、「君の銀の庭」「ひかりふる」と、前半戦のクライマックスへ。
特に「君銀」と「ひかりふる」は、“with Strings”の定番曲であり、しかもどちらも「劇場版まどか☆マギカ」の曲だと考えると、その作品世界とピアノ&弦楽四重唱の美しい出会いというのは幸福としか言いようが無い。
「ひかりふる」は3人のハモリが魅力とは言えいえ、やはり核となるのはWakanaのきらめくような歌声だ。

(Q:アコースティックライブをやってきてよかったと思うのはどんなことですか?)
Wakana「やっぱり1曲1曲をさらに掘り下げるきっかけになりますし、自分の歌というものをシビアに見ることができるすごくいい機会でもあります。曲を深く知ることによって、表現力も変わってきたりするんですよ。」(ツアーパンフレットより)
まして「ひかりふる」は、レコーディング時に「ひとつひとつをクリアにしていこう」と梶浦由記と詰めていき、ようやく自分の立ち位置を理解できた!とWakanaが大切にしている曲だ。
彼女の美しいロングトーンとさくちゃんのピアノで終わるや、3日間とも前半最大の万雷の拍手が迎えた。

この機会に、これまで4回の“with Strings”のセットリストを統計化してみたが、4回とも必ず奏でられたのが“storia”“Eden”「ひかりふる」の3曲。
今回は“X’mas Premium”とは異なり、要所でクリスマスソングを入れる構成がない分、Kalafinaオリジナル曲が必須であることを考えると、大事な冒頭に“Eden”、前半の締めに「ひかりふる」が入ったことは、おそらく偶然では無い。
これからも“with Strings”では重要なポジションを占める曲になるはずだ。
(なお、過去3回演奏されたのは、“seventh heaven”“Gloria”“sprinter”「夢の大地」「君が光に変えて行く」「輝く空の静寂には」「屋根の向こうに」。いずれも納得。)

そして、次のMCはHikaruのひとりトーク。
H「『ひかりふる』を歌うと、改めて3人でKalafinaなんだな、と実感します。Kalafinaは当初、プロジェクトだったので、目の前の楽曲にガムシャラに取り組んでいたんですけど、そんな時に新しくKalafinaと響きあえた作品があって。(以下、『黒執事』作品紹介。しっかり『あくまで執事』のキーワード付き)そんな作品から生まれた曲が、Kalafinaの第2章のスタートとも言える曲です。」
3日間、ほぼ同内容の安定感トークのリードで始まるのが、“Lacrimosa”。
ところが、この後半戦スタートの曲が、春うららな前半とうって変わって禍々しいまでの展開。
闇に引きずり込むような低音を叩きつけるピアノに、追い立てるように短く刻む弦の四重奏。
そこに悲壮なWakanaにダークなKeikoの歌声が重なり、造語パートを憑かれたようなHikaruが責め立てる。
照明もうららかな春空から一転、魔の暗雲のような赤と黒のストライプがステージを流れ、ヤバいだろこれ怖いんですけど、なダークファンタジー世界が現出された。
ピアノと弦ってこんな世界もできるんだー、というか、ここまで編曲の可能性を広げられる梶浦由記の原曲もすごいというか。
クリスマスには(たぶん)絶対にできないダークアレンジ(2012年に演奏しているが、どんなアレンジだったか思い出せない)を見せつけて、次曲へ。

『空の境界』からの3曲、「君が光に変えて行く」「傷跡」“sprinter”。
この“sprinter”のアコースティック・バージョンは、2011年12月24日(横浜ランドマークホール)の初アコースティックの際に、私が最も驚かされた曲。
(この時の伝説の初“sprinter~acoustic ver.~”は、“Kalafina 5th Anniversary LIVE SELECTION 2009-2012”に収録。)
もとは3人が交互に追いかけながら魂が叫ぶようなアッパー曲を、真逆のゆったりと、しかし魂の叫びはそのままに残した、さくちゃんの名アレンジだ。
夏恒例の「音霊」をはじめ、アコースティックでは必ずと言っていいほど演奏され、“with Strings”でも2012年&2013年で演奏。
個人的には「アコースティックライブって、この曲を演奏するためにあるんじゃないか?」とまで思ったこともある。

この曲はなんといってもHikaruだ。
愛する者への愛おしさを抱えるように丁寧に、それが死によって断ち切られる残酷さを叩きつけるように、そして運命にあらがう生命の短い煌めきを訴えるように。
さまざまな歌の表情を聴かせながら、従来のバンドライブの時の枠をはみ出すような熱情で歌い上げるその姿は、まさに“with Strings”ならでは。
Hikaru「この編成のライブではシビアな部分がたくさん見えてくるので、1回ステージをやるだけで課題もすごく増えますし、それによってやりたいことも増えていくんですよね。(中略)アコースティックだと音数が少なくて、歌でもさらにグルーヴ感を出していかなければいけないし、響きもすごく大事になってきます。(中略)これまでクリスマスライブとして3回の公演をしてきて、そういうことが少しわかりかけてきたこのタイミングでまたやらせていただけるのはすごくありがたいなと思います。」(ツアーパンフレットより)
まさに、やりたい表現、試してみたい歌い方を、実践できる場としてのアコースティック。

WakanaもHikaruも「シビア」という表現で、アコースティック・ライブを語る。
シビアだからこそ、基本に忠実に重ねるところもあれば、やったことがない挑戦を試すところもある。
「ひかりふる」も“sprinter”も、そしてそれぞれの単独トークも、この先のKalafinaの進む道を照らしている。

 

伝説の!仙・台・百・合・展・開

“sprinter”が終わると、4回目のMC。
今度はKeikoから。
Keiko「初期はひとりひとりのボーカルを立てる曲が多くて、3声が少ないんですね。その後の積み重ねがあって、今の3人のハーモニーがあるんだな、と。この8年、いろいろな変化があったと思いますけど……Wakanaちゃん、ステージで話せるオフィシャルなことで、ヨロシク。」
客的には「なんだその前振りは?www」という、この時点ですでに笑いを誘う振りで、Wakanaの「8年間で変化したこと」。

ここからはさまざまな方のライブレポートでも書かれている、伝説的なトーク。
基本は、W「自分はきょうだいは兄だけだが、KとHは女姉妹。なので彼女たちは女性とのスキンシップが上手。女の子と腕くんだりハグしたりというのが自分は照れるんだけど、Keikoがタッチしたりハグしたりするので、この8年間で女の子と手をつなげるようになった。」という内容で、札幌は(笑)で済んだのだが、伝説となるのは2日目・仙台!

W「出番前の控え室とかで緊張してると、手を結んだりするんですよ。」
K「手を!?」
W「女子と女子が」
K「なにそれかわいいwww」
W「女性と女性が」
K「変わってないwww」
W「可愛い女の子たちが」
と、まさかの百合展開。さらに…。
k「わーちゃん緊張してる?」と言うや、歩み寄ってぐぐぐっと顔を近づけるKeiko。
W「これぐらい近くても平気(汗)」
K「(さらにギリギリまで顔を寄せ)へえ~。顔が泳いでるwww」
W「でも、私が攻めるとKeikoは嫌がるんですよ。私が『愛してるよ』ってスタンプ送ると『どうしたの?』って。」
W「そんなことないよ。」
H「普段しないことするから驚くんですよwww」
K「突然『愛してる』はちょっと。」
W「わかった、ちょっとずつレベル上げる。」

こりゃその筋のクラスタが悲鳴上げるわwww

Hikaruは、
(札幌)「自分はステージでも人見知りを発揮する、何も喋らない数年間を過ごしたけど、ラジオや某コーナーでよくしゃべるようになって。それを2人が褒めてくれたんで、調子に乗ってしゃべるようになったのが、この8年の変化。みなさんがいなかったら、こんなにしゃべる人生になってませんでした。」

(仙台)「髪の長さが、最初は胸のあたりだったのが、いったんおへその下まで伸ばして、“heavenly blue”の頃に今の長さに切って、ちょっとクールになりました。ネットを検索すると、違う人がいます。」

東京では両方のネタを出して、どんどん話す時間が長くなるという、ああ、確かに成長したなあ、と初期の頃から見ていた者はしみじみするのでした。

あと札幌ではWakanaが、ファンからの手紙にあった「Kalafinaを知った時は小学生でしたが、今、大学生になりバイトしてチケット買ってます」という内容を紹介。
すると3人とも8年という時の重さにいろんな思いをめぐらし、
K「この先、私たちの声や容姿が変わっても、変わらずファンでいてください」という、なんともしみじみ展開。
このしみじみさ加減で、仙台以降は止めたのかな?

 

「アレルヤ」Keikoのアコースティック、
そして未来へ

そして演奏は、「昨年12月にやったアコースティックライブのときに『“believe”ってこんなに感情を込められる曲だったんだ!』と改めて思いました」(Wakana・ツアーパンフレットより)な、“with Strings”ならではの変化が楽しめる“Believe”。
そして「五月の魔法」「未来」「夢の大地」、演奏メンバー紹介へ。
札幌では、櫻田泰啓の故郷=凱旋公演のおめでとう情報付き。
そして東京では、9人編成の今野ストリングスという、ゴージャスな紹介を経て、クライマックス。

「真昼」(札幌・仙台)、“I have a dream”(東京)、そして“ring your bell”で本編終了。
「真昼」と“ring your bell”は近作で、2015年のクリスマスからの引き続き。
“I have a dream”は、意外にも初の“with Strings”だ。

アンコールは、“storia”(Hikaruのグッズコーナー!を挟んで)“far on the water”という、「歴史秘話ヒストリア」曲で全編終了。
3会場とも、満場のスタンディング・オベーションと喝采がステージを包んだ。
特に仙台会場の勢いはすさまじく、周囲の様子見などせずにほとんど一斉に全員が立ち上がったかのような熱気ぶり。
クリスマス時の品の良い優しいオベーションよりも、バンドライブ時の熱さに近い。

感極まった表情の3人とミュージシャンたちのカーテンコール。会場に響く歓声。
そして、会場に流れる「五月雨が過ぎた頃に」で、ミュージシャン退場。改めての3人の挨拶。
こうして“with Strings”にも、クリスマスと異なる新たなジャンルが生まれた!

…と大団円になるはずだが、千秋楽・東京ではサプライズが。
カーテンコール時に、桜の花びら?が盛大に降り注ぎ、これまでになかった華やかなエンディングに。
さらにミュージシャン退場時に「五月雨が…」がかからないな、と思ったら、
Hikaru「…もうちょっとここにいたい…最終日だし。」
Keiko「みなさん、いいですか?(大拍手)さくちゃーん!」
大歓声の中、呼び戻されるさくちゃん。
そのさくちゃんやH&Wに耳打ちし、内緒話相談するKeiko。
その仕草に注目し、水を打ったように静かになる観客。
上手いなあ、Keiko。この耳打ち時間を作ることで、観客の「何を歌うんだろう?」ドキドキ感を焦らす焦らす。

そしてダブルアンコールは…?

そして定位置につくや、つぶやくようにシンプルに。

K「アレルヤ。お届けします。」

この瞬間、観客は「おおおおおおお」とどよめいた。
「まさか、その曲で来たか!まさか、聴きたかった曲をここで行くか!」という、期待が爆発するどよめきと大歓声。
スタンディング・オベーション後の総立ちの観客に向かって、ピアノのみが伴奏という究極のアコースティック。
おそらくKalafina史上これまでなかったであろうシチュエーションで、カタルシス曲「アレルヤ」という、最大の試みをチームKalafinaは最後にぶっ込んできた。

そしてこの試みの場で、多くのソロパートを担当するkeikoの歌い方が、ただ事ではなかった。
低音担当=抑えという役割や、ソロの時でもハーモニーへのつながりを見すえてなのか、これまでのKeikoには、歌い上げても枠にはまった感があった。

「私は低音の担当なので、私が少しでもブレると全体の芯がブレるんです。(中略)曲の中で自分がメインのパートがあっても、なかなかハモからメインへの意識を切り替えがうまく出来なかったんです。それは少し諦めていた部分でもあったし、私は自分の役割に徹しようと思っていた時期もありました。」(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina」p44)

しかし今回、冒頭はいつも通りの優しく落ち着いた印象で導いた歌唱が、次第にシャウトへと変わり始めたのだ。

♪ まっすぐに まっすぐに
行けるだろうか 泣けるだろうか
全てが静かに 燃える日まで♪

そして2コーラス目は、まさに燃え尽きる直前に大きくなる炎のような、ソウルミュージックを思わせる歌声。

♪ 幸福(しあわせ)の記憶だけ
残したいと願いながら
優しく無意味に 消える日まで♪

こういうの曲で思い出すのは…

聴いていて、あっ!と、尾崎豊を思い出した。
演技やダンスを学んでいた高校1年のKeikoが、「歌をやりたい」と変化した原点だ。

「自分でも尾崎さんのような音楽をやってみようと思ったんです。だから、Kaiafinaが始まる前には、ロックなユニットもやっていました。でもダメでしたね。(中略)尾崎さんのライブって、メチャクチャやっているように見えて、決してそんなことはないんです。歌詞も世の中をいろんな角度から見た上で書いているし、すごく繊細で敏感な方なんだと思います。でも、そういう人間としての深みは当時の私には無かった。だから、同じことをやろうとしても、軽いものにしかならないんですよね。」(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina」p37)

Keikoは、舞台の上下(かみしも)に別れたWakanaとHikaruの間を行き来し、魂を交わすかのように身を寄せ、肩に手を置く。
2人もそれに応え、普段より熱く歌っているかのようだ。

♪ アレルヤ
全てのいのちが
歌うときが来るって
信じて
雨の中で両手
ふりかざして踊って♪

Keikoは決して勝手にはみだしているわけではない。
2人が受け止めてくれると信じて、このアコースティックの場で自分を試している。

「今はもっとボーカリストとしての自分を出してもいいのかな……、出さなきゃいけないんじゃないか……と思うようになりました。役割に徹することとボーカリストとして表現を追求すること、それは両立ができるようになりたいと思うようになってきたんです。」(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina」p44)

曲のラストは、Keikoのソロから、Hikaruが、そしてWakanaが重なり、三声で美しく終わる。

♪ (Keiko)きみのみらいへ アレルヤ
(+Hikaru)アレルヤ
(+Wakana)アレルヤ ♪

最大の万雷の拍手と歓声。
はたして、Keikoの挑みがKalafinaそのものに吉と出るか否か。
上手くいけば、個性の異なる3ボーカルがひとつの音楽を奏でるKalafinaの魅力はさらに広がり、
下手をすれば、3人それぞれの表現欲がKalafinaに亀裂をもたらす元になるかもしれない。

しかし、MCでKeiko自身語っていたように、今の3人のハーモニーが生まれるまでに8年かかっている。
自信を失ったり、壁に行き当たったり、道を見失ったり、時に道を間違えかけたりしながら、常に3人で話し合い、励まし合い、懸命に声を重ねる試みを続けてきた彼女たちを信じたいと思う。

エンディング曲は「五月雨の…」ではなく、バンドライブの定番「未来」。
観客の手拍子に応え、名残惜しそうに、再びステージで会うことを約束する3人。
さらなる花吹雪が祝福するかのように包むなか、3人が去って“with Strings Spring Premium”という、特別な試みの時間は終わった。

アコースティックという「シビアな」舞台で、自分たちの表現に改めて向き合ったKalafina。
彼女たち、そしてチームKalafinaが何を得て、それが今後どのように展開するか。
それは上海ライブや夏のイベントを経て、9月のアリーナ・ツアーという大舞台で見えてくるかも知れない。
春の夜の夢を終えると同時に、Kalafinaは未来に向け歩み出した。

Keiko「皆さんもそれぞれ新しいスタートを切る季節だと思いますし、私たちも『far on the water』ツアーを経て『このスプリングツアーからまた新しいスタートを切る』という気持ちでいるので、このアコースティックライブで一緒にスタートを切って、Kalafinaの音楽を通して一緒に前に進んでいけたらなと思っています。」(ツアーパンフレットより)

【123日本武道館、準備はいい!?チケットは!?宿泊の予約は!?双眼鏡は!?予習は!?】
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

コメントを残す


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。