(ライブ番外編)梶浦&歌姫s観戦!ハチマキ王座防衛戦

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殴り合い前に“symphonia”!?」の衝撃

試合の入場の際に、Kalafinaの曲をかけるキックボクサーがいるという噂をネットで見かけたのは、かなり前のことになる。

しかもかけた曲が“symphonia”だというので、アントニオ猪木の入場曲“INOKI bom-ba-ye”や、長州力“POWER HALL”、前田日明“Captured”、グレイシー一族“Fort Battle”、桜庭和樹“SPEED TK RE-MIX”などなど、血湧き肉躍り「首かっ切ってやる!」なアッパー曲を血肉として育ったプロレス&格闘技者としては、「“♪ず~っと~、む~か~し~の~も~の~が~た~り~を~♪”を入場テーマとするとは、どんな選手だ?」と、頭上に“?”が10個並ぶほど、想像を絶するイメージだった。

まさかのちに、後楽園ホールの応援席で、その選手の名を全力で叫び続ける日が来るとは思わなかった。

選手の名は、ハチマキという。
ここ1年ほどで、Kalafina現場で挨拶をし、タイミングがあえば食事に行く仲になったが、ふと気づけば、実は本名を私はまだ知らない。
ハチマキ選手はハチマキ選手。それで良いと思ってる。

木訥で真面目で誠実で普通のお兄さんなのだが、その正体はキックボクサー、しかもREBELS-MUAYTHAI(ムエタイ)スーパーライト級の現役王者という強者。
ところが本職は、梶浦由記の音楽を愛し、KalafinaとFJのライブに勇気をもらい、その魅力を広めようとする熱き伝道者であり、いちファンでありながら、「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)」にインタビューが掲載されるという活躍で知られる。

そんな二足のわらじなのかどうかはよくわからないが、おそらく世界にただ一人しかいない稀代の人物として、ハチマキ選手は「ハチマキ選手」としか言いようがない存在なのだ。

「音楽ライブに行けば、自分は頑張ろうと思える。だったら自分の試合を見た人にも“俺も頑張ろう”と思ってもらいたい。キックの前売り券は音楽ライブと同じで(安い席でも)5,000円とか7,000円するじゃないですか。いま僕の試合には(作曲家の)梶浦由記さんやKalafinaのライブで仲良くなった人も応援に来てくれる。僕はライブの価値を分かっているつもり。僕は派手な試合は出来ませんが、少しでも応援してくれる人に還元するためにも、気持ちが伝わるような試合がしたいと思っています」(初防衛戦直前のインタビュー。「イーファイト」2015年7月9日

降臨!聖地に舞い降りた歌姫たち

そんなハチマキ選手がタイトル防衛戦をおこなうというので、初めて彼の試合の応援に駆けつけた。
格闘技・プロレスの聖地、後楽園ホール。
私は最近、近くのJCBホールにKalafina1ライブに参戦することは多いが、聖地訪問は10数年ぶりだ。
狭いロビーに、観客の8割を占める20~50代男性がひしめく、懐かしい光景。
いやー、この空間に来ると、坂口征二の引退試合や藤波vs.木村ワンマッチや神取vs.デビルの思い出が…、というのはさておき。

仕事の都合で、到着したのはハチマキ選手の試合の直前。
ハチマキさんが用意してくれた、入場通路そばの応援席は、ハチマキTシャツを着たカジウラーたちが並んでいる。(ろくにご挨拶できず、申し訳ありません。)

第6試合。ハチマキ選手が保持する、タイトルマッチ。
ここ3試合、ノンタイトル戦で連敗している彼にとって、絶対に負ける訳にはいかない試合。
しかも、彼にはもうひとつ負けられない理由があった。
大勢のファン・友人が応援に駆けつけただけでなく、東2階のバルコニーには、憧れの梶浦由記をはじめ、Kalafinaの3人とFJのKaori、YURIKO KAIDA が彼を見守っていたのだ。
「大袈裟じゃなく、人生を変えてくれた神様みたいな大きな存在です。(中略)僕はいつもKalafinaのライブで感動をもらっています。なので、いつの日か、自分の試合に招待させていただいて、梶浦さんとKalafinaの3人が感動するようなベストファイトを見せたいですね!」(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)」)

なんと、その「いつの日か」をやっちまったのである!しかも負けが込んでる後の、防衛戦という舞台で。さらに、KaoriとYURIKO KAIDAも参戦という歌姫sフルスペックである。
はたして自分に対する追い込みなのか?それとも今回は必ず「感動するようなベストファイト」にする自信か?ハチマキ選手は、試合10日前のREBELS公式インタビューで、意気込みをこう語っている。
「僕は試合を楽しみたいとは思っていない。勝ちたいという思いが一番強いけど、あとは見ている人に何かを伝えられる試合をしたい。派手な試合にはならないかもしれないけど、別にKOでなくても伝えられるものはあると思う。そんなことを言って何年かぶりにKOしてしまうかもしれないけど(含み笑い)。」(2016年5月22日REBELS 公式HP

私が1Fのハチマキ応援席からは、東バルコニーはかなり見上げる状態になるため、座席に座っているチーム梶浦の面々は、頭がちらちら見える程度。おそらく初観戦のキックボクシングだと思われるが、その表情は確認できない。
はたしてハチマキ選手は、彼女たちに感動を与えられるのだろうか?

選手入場!注目のテーマ曲は…?

挑戦者、極真空手の渡辺理想選手が青コーナーに先に入場。
私事ながら、極真分派の某フルコンタクト空手を健康維持レベルで何年か長年習った身としては、道着を着ての入場や、リングイン時に、「押忍!」と十字を切られたり、シャドーですさまじいキレの後ろ回し蹴りを見せられると、ついふらふらとそっちに行ってしまいそうになるが、そこは踏ん張る。

続いてチャンピオン、赤コーナー側からの入場。後楽園ホールに響き渡ったのは…、
“sprinter”!この曲は、初めてKalafinaを知ったハチマキ選手が、最初に“Seventh Heaven”を買って印象に残った曲だという。
「音楽の詳しいことは全然わからないですけど、そんな僕でも“すごい音楽だ!”って思わせてくれるなにかが確実にあった。でも、何でもそうだと思うんですよ。僕のキックボクシングでも同じじゃないかな、って思うんですよね。“プロ”というのは、素人が見た時に“すごい!”って感動できるものであるべきだと思っていて。(中略)僕も負けられない!と気合が入ります」(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)」)

“sprinter”を途中までたっぷり聴かせてから、ハチマキ選手入場!
通路の横で絶叫する応援席のカジウラーたちにも脇目もふらず、一直線にリングへ。その肩には、チャンピオンベルト。
エプロン・サイドでロープに手をかけ祈りを捧げるや、リングイン。
表情が少し硬い。

ゴング前、赤コーナーを背にして立つハチマキ。バルコニーは彼の後ろ側にあたる。
ここまでハチマキは目を伏せ、バルコニーに目を向けなかった。

ハチマキ危うし!危機を救ったのは…?

試合開始のゴングが鳴った。
ハチマキにいきなり暗雲が垂れ込める。
豪快なハイキックは空を切って、みずから転倒し苦笑い。
ミドルキックは何度もキャッチされて、軸足を払われる。
攻めあぐねたところで、軸足を引っかけるようにパーンと払われる。
素人目に見ても、カタい!
まるで少年マンガでよくある、主人公の心理がそのまま試合展開に直結するパターンそのまんま。解説者が「ふーむ、いけませんな。プレッシャーで、カタくなってますな」と語りそうな展開に、見ている方も嫌な予感が頭をよぎった。

見上げると、バルコニーのみなさんは、総立ちで声援を送っている。
それでもハチマキは、試合中はもちろん、コーナーに戻る時にも目線を上げない。
ストイックだなー。私だったら間違いなく、見てしまう。

2ラウンドから、徐々にハチマキの動きは変わっていった。
派手なキックではなく、首相撲を多用するムエタイならではの攻撃へとシフトしていったのだ。

この首相撲、相手の首筋に両手を回してしがみつくのだが、地味な体勢に見えるため、かつてテレビで人気を博したK-1などではすぐにブレークされたが、ムエタイではこれこそが勝負どころ。
やられる方の感覚としては、首を左右から万力のような腕でロックされ、そのまんま左右へとブン回される。ブン回されないように、と上半身全体を全力で踏ん張ると、スタミナをとんでもなく消費するし、首~頭という自分の意思決定の中枢が、他人によって好き勝手に振り回されるのって、心折られます。
そこへさらに、脇腹やみぞおちに相手の膝がガンガンぶち込んでくるから、そのたび息が詰まる。キツい!これはキツい!

“After Eden”Special LIVE 2011の邂逅

そして第3ラウンド、右ストレートがヒットし、渡辺選手ダウン。
この一撃、ハチマキ選手自身が、意外な裏話を試合後に語っている。

「サウスポーの相手は苦手(渡辺はサウスポー)」というハチマキだが、「パンチでダウンを取ったのは2年ぶりです」と言い、「僕は不器用なので練習で出来たことが試合で出るのは2年後くらいなんです(笑)。今回は2年前にやったサウスポー対策がやっと出てきました」(「イーファイト」2016年6月3日

ハチマキ選手はよく、「努力の人」と語られる。
練習はいくらキツくてもがんばれる。いくらでも努力はする。
でも人前で試合をすることには慣れず、デビュー直後は緊張することで負けが込み、負けるとさらに、次の試合で緊張する。
そんな時、“After Eden”Special LIVE 2011(2011.11.25@ TOKYO DOME CITY HALL)で、初めてKalafinaのステージを観て、衝撃を受けたという。

「すごく盛り上がるじゃないですか。みんな幸せそうな顔をしてる。たくさんの大人たちがキラキラした瞳をして子どもみたいな笑顔になって(笑)。もちろん僕も一ファンですから、自分自身もめちゃくちゃ感動して、大満足で…。でも、チケットを買って観に来てもらっている、という意味では、Kalafinaもキックボクシングの試合も同じなんです。なのに自分はKalafinaのように観に来てくれた人を感動させてあげられてるのか?って思った時に、全然できてない!って。それで、もっと頑張らなきゃ!という気持ちになりました。(中略)そう気づいた時から、試合に対して前向きな気持ちで臨めるようになりました。だんだん自分の力を発揮できるようになって、タイトルを獲得するところまで行けた。」(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)」)

一方で興味深いことに、ハチマキ選手が感銘を受けた“After Eden”Special LIVE の頃、ライブを本格化させてまだ2年半のKalafinaも、“プロとしての自分”に満足していたわけではない。
Wakanaは、「『After Eden』の時期はライブでも神経質になっていました。難しいと思い込み過ぎて、『歌えないかもしれない』と毎回思ってた。すごく後ろ向きになってしまっていましたね。」(「別冊カドカワ・総力特集Kalafina」)と、ハチマキ同様、試合=ライブに出る緊張を語っている。

またKeikoは『After Eden』がライブを意識したアルバムで公演数も増えたこともあり、「ライブアーティストとして音楽をどう発信していくかということに視点を置くようになっていきました。何より、自分たちのために遠くから集まって会いに来てくれたり、時間やお金や想いを私たちに向けてくれるファンの皆さんと交流する機会が増えた時期でもあったので」と、会場に足を運んでくれる観客のために何ができるのか、という意識にシフトし始めた頃だと語っている。(「別冊カドカワ 総力特集 Kalafina (ムック)」)

ハチマキ選手が感動し、「もっと頑張らなきゃ!」と決意したステージの頃、Kalafinaもまだプロとしての自分に悩み、まだ形の見えないあるべき姿を探していた。そこからの彼女たちの模索と努力があったからこそ、今のKalafinaがある。
そのステージを観て「プロとしての努力」に目覚めたからこそ、今のリング上のハチマキがいる。
「開き直りではないけど、自信があろうとなかろうと結局やるしかない。たとえ試合で自分の力を出せなくても、できることをやるしかない。そういうふうに思えるようになってからは精神的に変わりましたね。」(2016年5月22日REBELS 公式HP

“努力”という地味な奇跡の物語

第3ラウンドでダウンを奪ってからは、王者としてハチマキ選手の圧勝だった。
距離を詰めての首相撲で、ヒザを叩き込み続けるハチマキ。

ハイキックのような華麗さのない、地味な攻撃。しかしハチマキの一発一発は、悩みながら、迷いながら、それでもただひたすら愚直に練習を積み重ねてきたであろう姿を、観客の脳裏に浮かばせる。
ハチマキ応援席のみならず、会場のあちこちから、ヒザが一発入る毎にかけ声が飛ぶ。
「“プロ”というのは、素人が見た時に“すごい!”って感動できるもの」というハチマキの想いが、今まさに首相撲という地味な、しかし人間の努力の積み重ね、その凄みを見せつけるワザとして、リング上で炸裂していた。

最終第5ラウンドまで、ハチマキは渡辺選手の反撃を許さず、首相撲で圧倒し続けた。

判定は、3-0でハチマキ選手の防衛!
のちに三賞として「ベストファイト賞」が授与された、熱い戦いだった。

バルコニーの梶浦由記や歌姫たちも、立ち上がって拍手をしている。
遠くて表情まではわからないが、きっとハチマキが“After Eden”Special LIVEで見たような、キラキラした瞳をした子どものような、幸せそうな笑顔になっていたのではないだろうか。

退場する時にハチマキ選手は、入場時には一瞥もしなかったカジウラー応援席に駆け寄ると、爆発するような笑顔でハイタッチ!
ほとばしる勝利の喜びと、抱えていたプレッシャーからの解放と、応援してくれた仲間への厚い感謝と。こういう人柄が、また彼の人望であり魅力なんだよな-、と改めて感じた。

しかし彼はついに、一度もバルコニーには目を向けなかった。
そこがまた、謙虚な彼らしいというか…。

ところが試合後2時間ほど経って、梶浦由記がツイッターに試合を見に行ったことを公表。そこには、観戦したチーム梶浦に囲まれる、チャンピオンベルトを肩にしたハチマキ選手の写真が…。

このツイッターで、カジウラーたちは大騒ぎになった。
「ハチマキ、ベルト防衛!」だった試合が、「自分のあこがれの人に自分の試合を見てもらい、しかもベストファイトで感動してもらった試合」という、まるで夢物語か映画のストーリーのような出来事になったのだ。

梶浦と歌姫たちは、それぞれSNSにこう書き込んでいる。

梶浦@ツイッター「私も頑張ろう、と決意を新たに。日々を、地道に、一歩一歩。うん、ありがとうございます!素晴らしい勝利に勇気とエネルギーをたっぷり頂きました!╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ ! 」

Keiko@Kalafinaブログ「何かにひたむきになる、がむしゃらになる、そんな”何かに”出会えるってその人が探し求めてきたからこそ出会えたんじゃないかと思うんです。自分もハチマキさんの闘う姿をみて、自分もまだまだ探し求め続けて行かねば!と思いました。」

Kaori@ツイッター「初めて試合を見たのですが、とにかく凄かった!!ハチマキさん、本当におめでとうございます(^ω^)今夜はエネルギーを沢山頂きました。」

自分に力を与えてくれた人々が、自分の試合で力を受け止めてくれた。
ハチマキはあちこちでとてつもない幸せ者として、賞賛され、こんなまとめサイトまで。「キックボクサーのハチマキ、梶浦由記とKalafinaの応援を受ける 」

そして最後は、ハチマキ本人の試合直後のブログを紹介して終わりたい。
「キックボクサーハチマキのキックボクシングについてはほぼ書かないブログ KalafinaとFictionJunctionとときどきキックボクシング」2016年6月2日
あえて内容は引用しません。じっくり彼の人柄を感じながら、読んで欲しい。

そして私は改めてこの項を書きながら、こういう素晴らしいスポーツ選手と、素晴らしいアーティストたちが織りなした、「“努力”という地道な奇跡の物語」に改めて感じ入った。

【123日本武道館、準備はいい!?宿泊の予約は!?双眼鏡は!?予習は!?】
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